<金口木舌>われわれは勝利する


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 始まりは海を眺め、ただ祈ることだった。「アラブの春」と呼ばれる2011年のエジプト革命である。前年、警察の不祥事を暴く動画を公開した28歳の青年が警官に殴り殺された。抗議するフェイスブックが作られ、何万もの人が参加した

▼そこから出たアイデアがサイレントデモだった。黒服を着て通りに出る。海に向かい1時間静かに祈り、帰宅する。政治活動が抑圧されていた当時、この行動に数千人が参加した
▼これが民主化への源流となる。チュニジアのジャスミン革命も影響し、1月25日には大規模デモが起きた。フェイスブックを作ったワエル・ゴニムさんは当局に12日間拘束され、解放後こう書いた
▼〈われわれは勝利する。政治を知らないから。政治家のように汚いことをしないから。われわれは勝利する。心から涙を流すから。夢があり、その夢のために立ち上がるから〉
▼その後のエジプトは迷走が続き、民主化はまだ遠い。だが、無理だと思い込んでいた厚い壁も、一人一人の結束で穴が開くことを教えてくれる事例となった
▼安保法案に反対する若者グループ「SEALDs(シールズ)琉球」が23日、初の集会を持つ。こちらもソーシャルメディアで個人が緩やかにつながる。既成の組織や概念に縛られない柔軟な思考が頼もしい。しなやかに結び付き行動することが未来を開く一歩になる。