<金口木舌>貧困対策


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 家庭環境に恵まれない子どもたちがたむろする場所は学校、それも体育館の裏などが最近の傾向という。沖縄市内の自治会長から聞いた話だ

▼「街の中に居場所がなくなったこともある。一方で学校は青年会など兄貴分の監視の目が届かない。街とは違い、人目に付かない場所で、仲間同士が集まりやすいから」と言う
▼帰宅しても1人で過ごし、中には夕飯にさえありつけない子どもがいる。精神面も含め、貧困と隣り合わせの子どもたちが肩を寄せ合うように学校でたむろする姿を見るにつけ、自治会長は何か対応できないかと思案に暮れている
▼かつては井戸端会議の話題にと隣近所の情報収集にやたら熱心で、世話好きな人が地域にいた。実はそんな目端の利く人がよその子にも食事をさせ、地域情報を共有して人目の届かぬ場所に逃げ込む子も救ってきた側面もあるという
▼沖縄市民会館で23日、「子どもの貧困を考えるシンポジウム」があった。沖縄大学の加藤彰彦名誉教授は、子どもの心身の貧困問題に向き合うためにも小中学校区単位でのコミュニティースクールの開設を提唱する
▼地域の縦の世代をつないで、世話をする地域の拠点が必要だ。年を重ねて培った知恵を次の世代に教えてつなげる。核家族化などで地域の「世話好き」の再登場が見込めない中、貧困対策は人智(じんち)を駆使して当たりたい。