<金口木舌>ご先祖さまに感謝


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 内輪の話で恐縮だが、記事の扱いや見出しを決める担当者が最も頭を悩ますのは死亡記事の扱い。「棺(かん)を蓋(おお)いて事定まる」は、人の真価は死んでから決まるという意だが、死亡記事も指標の一つになるかと思うと緊張する

▼亡くなった人の功績、社会に与えた影響などを基準に大きいと判断すれば1面に据え、見出しの大きさを決める。正解はないものの、後日反省することもある。一例は1979年のパンダ「ランラン」
▼大ブームを起こした故にランラン死亡は各紙1面。同じ日に掲載された落語家の三遊亭円生さんの訃報はそれより小さかった。古典江戸噺(ばなし)の大御所で、落語協会分裂騒動を起こしたことでも注目された円生さんの方が大きい気がする
▼ところで、有名人の中で葬儀を終えた後に亡くなったことを公表する例が最近増えた。周囲を煩わせたくない、家族だけで送りたいなどが理由だという。だが、何か寂しい
▼沖縄では多少の縁があれば葬儀には駆け付けるから会葬者が多くなる。県外の都市部だと5千円以上が相場の香典も沖縄は千円から数千円。大勢が少額を持ち寄り、葬儀費用を賄う“ゆいまーる”の意味もある
▼大勢で見送り、旧盆や清明祭でまた家族が集う。その良さをしみじみ味わう季節だ。明日は「ウークイ」。棺を覆った後も多くの縁者をつなげたご先祖さまに感謝し、手を合わそう。