<金口木舌>「お盆玉」考


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 近所の郵便局で奇妙なものを見つけた。「おぼんだま」と書かれたポチ袋だ。お年玉のお盆版だという。山梨県の紙製品会社が2010年に作り始めたのがきっかけで、昨年から日本郵便も販売を始めている

▼江戸時代、山形県でお盆に奉公人に衣類やげたを渡す習慣があり、それに倣ったようだ。崎原恒新著「沖縄の年中行事」によると、かつて読谷村宇座でも親が子にげたを贈っていたというから、似た習わしは各地にあったのだろう
▼里帰りした孫に祖父母が喜んで小遣いをあげる姿はほほ笑ましい。だがインターネット上には「出費が増える」「子どもに金を与え過ぎ」と否定論も多い
▼孫とたまにしか会えない他府県とは違い、日常的に行き来の多い沖縄では普及しないはずだと考えていたら、違うようだ。ある大型店の話では、ことしはお盆玉袋の問い合わせが増えていて、来年から販売を検討するという
▼孫を思う心に水を差す気はないが、経済的にゆとりのある祖父母層の懐を狙う商戦には踊らされたくない。十数年前、同様にプレゼント需要を当て込んで、流通業界が始めた「孫の日」は、認知度が低いままだ
▼お盆はウヤファーフジ(ご先祖)を敬い感謝する行事。子どもたちにお小遣いをあげる前に、祖先への思いをきちんと伝えることもお忘れなく。「御香(うこー)どぅ孝行」。線香を上げてこそ孝行になる。