<金口木舌>「決めつけ」をなくそう


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 夏の甲子園は興南戦で目の覚めるようなホームランを放ったオコエ瑠偉選手(東京・関東第一)の活躍がひときわ印象に残った。しかし、一部スポーツ紙の報道は後味の悪いものだった

▼「野性味を全開」「本能をむき出しに」と報じ、差別的と批判された。記事はオコエ選手の力強さを伝えたかったのかもしれない。だが、父がナイジェリア人というだけで「アフリカの野生」を連想させる表現を使うことは適当だろうか
▼オコエ選手は走攻守に秀でていた。私たちはその理由を短絡的に人種によるものと「ステレオタイプ」で見がちだ。その裏に根強い偏見や誤った先入観があることに気付かねばならない
▼昨春のセンバツで背番号をもらえなかったオコエ選手は「甲子園に出られるよう、走り込みをはじめ、やれる練習は何でもやった」と話している。努力が素質を伸ばし、身体能力をさらに高めたのである
▼「沖縄の人なら英語話せるでしょう」「日本語上手ですね」。上京後、こうした言葉にショックを受けたと話すウチナーンチュは多い。悪気はなくとも、ステレオタイプな言葉は時に人を傷つける
▼日本社会は多様化が進む一方で、意識が追い付いていない面がまだある。偏見やゆがんだ先入観を捨てることは決して難しいことではない。ステレオタイプの「決め付け」をやめる心のありようを考えたい。