<金口木舌>歴史を刻んだ地名


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 「蛇皮線」。かつて県外のメディアは沖縄の三線をこう呼んでいた。地元では誰も使わないのに、勝手な呼称に違和感を覚えた

▼アラスカの先住民も同じ違和感や不快感を抱いていただろう。北米最高峰のマッキンリー山が、先住民が長年使ってきた「デナリ」(=偉大なもの)の名に戻されることになった
▼1896年、探検家が当時の共和党大統領候補ウィリアム・マッキンリー氏を支持するために命名したという。翌年、彼は第25代大統領の座に就いたが、地元では元の名に戻すよう長年求め続けていた。州政府は1975年に改称した。連邦政府は119年たってやっと重い腰を上げた
▼本来の名称をよそ者が変えるのは歴史の侵害と言える。インドでは2001年、英植民地時代のカルカッタを本来のコルカタに戻した。最近では、旧ソ連のグルジアの要望を受け、ジョージアに変えた例がある
▼県内では、96年に浦添市勢理客が「せりきゃく」から「じっちゃく」に統一し、バス停のアナウンスも変わった。旧与那城町(現うるま市)は94年の町昇格時に「よなぐすく」を「よなしろ」に改め、研究者から批判も浴びた。豊見城は02年の市昇格を前に「とみぐすく」か「とみしろ」か議論し、前者に決めた
▼国連は地名を先住民の権利と認めている。歴史と先人の労苦が刻まれた地名は貴重な文化遺産。大事にしたい。