<金口木舌>女性の輝きは身近から


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 4月、市町村職員の昇進名簿に懐かしい名前を見た。末っ子が手を離れるまでは家庭を大切にしたいと話した彼女の横顔を思い返す

▼301人以上の大企業や国、地方自治体に女性登用の数値目標や情報公開を義務付ける女性活躍推進法が来年4月、施行される。しかし中小企業は努力義務止まり。非正規労働の7割を占めるという女性の課題は雇用元や派遣元が「検討する」との付帯決議で先送りされた
▼離婚後、実家に頼れなかった40代の母を取材した。非正規で早朝深夜残業をこなし、上司のいじめに踏ん張った。一本気な性格。家賃滞納を気にしてクリスマスの飾り付けも遠慮した。うつを患う。子どもを塾に通わせ、大学にやれないのが「悔しい」と拳を握った
▼男女間だけでなく格差は女性の中にもあって、例えば正規とそれ以外。子を産み育てる女性の問題は、雇用だけでなく福祉や教育など横断的対策が必要だ。出産を機に職場で嫌がらせに遭うマタハラ対策も緒に就いたばかり
▼活躍推進法は雲の上の出来事のよう。官民の女性管理職が3~4割になる未来を想像すればこの社会、変わるだろうか。身近な女性・子ども対策と表裏一体に進めるべきだ
▼大所高所から論じるだけでは進まない。職場や身近で気になる人がいれば見守り、できれば声を掛けよう。「最近どう?」。それが全ての始まりだろう。