<金口木舌>進撃の巨人


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 何の前触れもなく、巨人が壁を破って侵入してくる。そして次々と人間を捕食していく。マンガ「進撃の巨人」の一幕だ。独特の世界観とともに、ふんだんにちりばめられた謎が人気に拍車をかける

▼巨人はどこから来たのか、なぜ人を襲うのか。それまで高い壁に守られ平和を享受してきた人類が、一気に「脅威」にさらされる。急に「脅威」が現れるあたり、なんだか日本の安全保障論議を思わせる
▼安全保障関連法案をめぐる論議も大詰めを迎えている。来週の参院採決を目指す政府、与党に対し、法案成立阻止で臨む野党。与野党の駆け引きも激化している。中でも注目されているのが統合幕僚監部の内部資料だ
▼資料には、河野克俊統合幕僚長による昨年の県知事選への介入とも受け止められかねない発言もあった。幕僚長は会見で「確認中」と述べるにとどめたが、自身の発言を「確認」とは苦しい
▼安保法案の廃案を求める県民集会が5日、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前であり、進撃の巨人ならぬ「巨大ミルク」も姿を見せた。こちらは脅威ではなく守護神の象徴だろう
▼安保法案の論議では答弁が食い違ったり、法案の内容を先取りした内部資料が出てきたり、謎が多い。進撃の巨人の謎は作品の魅力で歓迎だが、安保法案の謎は深まるばかりで法案のひずみを象徴している。