<金口木舌>貧困に向き合う


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 石川啄木の「一握の砂」の代表歌の一つ。「はたらけど/はたらけど猶(なお)/わが生活(くらし)/楽にならざり/ぢつと手を見る」。今で言えば、ワーキングプアと呼ばれる人たちの心境か

▼人の暮らしには形態や質的な違いがありこそすれ、いつの時代も貧困がある。1950年代半ばからの高度経済成長以降、日本では「貧困はもはや解決した」とされた面がある
▼岩田正美さんの著した「現代の貧困」(ちくま新書)によれば「貧困はなかったのではなく、見えてなかった」だけ。貧困は特定の人に集中しやすい。ワーキングプア、ホームレスなど、いつの時代もあったのである
▼厚生労働省は、6月末時点の生活保護世帯数が最高を更新したと発表した。全国で162万5941世帯。県内は2万6221世帯で、そのうち那覇市が8998世帯、次いで沖縄市が3687世帯と続く
▼沖縄市で開かれた貧困対策の集いでの話。生活保護に関し「バッシングにどう対応すればよいか」との質問が出た。受給者は保護費を必要としている高齢者や傷病者らで占める。それを知ってか知らずか、一部で不正があると流言飛語にさらされるという
▼「下流転落」なる言葉に恐れをなす人も多い。「貧ほど悲しき事はなし」という。貧困者だけの問題とせず、向き合うことで不安社会から安心社会に脱する処方箋は得られよう。