<金口木舌>努力と勇気を想像する


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 紙面に見つける名前に時の流れを思う。沖縄点字図書館で働く姿が先頃、本紙で紹介された宮城かし子さんもその一人

▼17年前、全盲の視覚障がい者では県内で初めて普通高校に進み、入学式には報道陣が大挙した。新たな世界に船出する彼女の鼓動を、社会人駆け出しの自分に勝手に重ねた
▼宮城さんを撮影し、写真甲子園に応募した豊見城高校美術部員を取り上げた記事で知る。実はマスコミが苦手、写真に写るのも嫌いなことを。「全盲の生徒が普通校に通う大変さ、その努力と勇気が同じ学校の生徒にさえ伝わっていない」。部員らの取材動機も心に響いた
▼緑内障の進行による視力低下と向き合う沖縄テレビの中安章雄さんは言う。点字で受験勉強して学業を修めるには壮絶な努力が必要。白杖(はくじょう)1本での通勤通学がいかに困難か。目が見えた時の100メートルが500メートルにも感じる-と
▼中安さんは見えにくくなる混乱と落ち込みの中、視覚障がい関係者を訪ね歩く。知恵を絞って困難を乗り越え、時にくぐり抜けて生きる彼ら彼女らの逞(たくま)しさに心打たれたという。「ささやかなことを大事にする」との言葉にも
▼「一人でも励まし、助けられれば十分」と中安さん。見える人を中心に回る社会で格闘する宮城さんや中安さんの長い時間は問う。健常や普通とは、見えるとは何か。折に触れ、答えに思いを致している。