<金口木舌>せめて見せかけだけでも


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 政治家は知性と品性、理性を尊重してほしい。「せめて見せ掛けだけでも」。与野党の先生方に思い当たる節があるだろうか。15日、安全保障関連法案の中央公聴会での浜田邦夫元最高裁判事の言だ

▼与党は週内に安保関連法を成立させる意向だ。残り少ない時間の中、浜田氏は英語の政治家を二つ挙げ、ポリティシャン(政治屋)にならず、国家百年の計を見据えたステーツマン(立派な政治家)の判断をしてほしいと述べた
▼「今はなき内閣法制局」と、安倍政権下の法制局に痛烈な皮肉も。浜田氏の「合憲性のチェックがほとんどなされていない」との指摘に、法制局は反論できるだろうか
▼学生グループ「SEALDs(シールズ)」の奥田愛基(あき)さんも公述人として政治家に呼び掛けた。「一人一人が思考し、判断し、声を上げることは間違っていない」。国会前での彼らのデモは全国にうねりを起こしている
▼安倍晋三首相周辺では「岸を超えて池田を目指す」との話がもっぱらだ。安保条約成立後に内閣総辞職した安倍首相の祖父岸信介氏を超え、安保法案成立後は経済政策を打ち出し、「所得倍増」をスローガンに掲げた池田勇人内閣のような長期政権に移行するというのだ
▼そのような計算が知性と品性、理性に見合うものか、国民は見ている。まさに「一人一人が思考し、判断する」と言い切った奥田さんのように。