<金口木舌>「くゎ」の響き


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 テレビを見ているとツッコミを入れたくなる時がある。昔より減ったとはいえ、ゴーヤーを「ゴーヤ」、ちゃんぷるーを「ちゃんぷる」と語尾を伸ばさない例がまだ見られる

▼街中でも首をかしげる表記に出合う。今が旬でオレンジ色の花を咲かせるクヮンソウ。不眠に効くとして多くの製品が出回っているが、表示は「クワンソウ」。どうも“食わん草”に見えてしっくりこない。シークヮーサーも「シークワーサー」と書いた商品が目立つ
▼古典的名著「沖縄語辞典」(国立国語研究所編)によると、このクヮは「くゎっちー」(ごちそう)や「くゎーし」(菓子)と同じ発音だ。「クワ」ではない
▼かつては「うんどうくゎい」(運動会)、「くゎいごー」(会合)と発する年配者がいた。正しく発音できないのかと誤解していたが、古来の「くゎ」の響きが身に付いていたのだろう
▼日本人は英語のLとRの区別が難しいと言われる。うちなーぐちの「くゎ」と「か」も、聞き分けられない人が増えているのだろうか。沖縄語には「うゎー」(豚)や「いゃー」(君)「ぐゎー」(小さいの接尾語)という独特の発音がある
▼きょうは「しまくとぅばの日」。うちなーびけーんの音はこの島の貴重な財産だ。私たちの世代で途絶えさせてしまうのは、実にもったいない。先人から連綿と受け継いできた発音の多様性は次代にもつないでいきたい。