<金口木舌>リバイバル


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 中島みゆきさんに「りばいばる」という歌がある。「やっと忘れた歌」が再び街中に流れ、忘れたはずの出来事を思い出す。揺れる心を歌詞は描く

▼沖縄民謡に「軍人」はまかりならぬと題名変更を迫られた普久原朝喜の「軍人節」は、1960年代にリバイバルする。戦場に送られる兵士と家族が引き裂かれた記憶がまだ生々しい時代だった
▼62年7月8日の本紙に「やめてください軍人節」という投稿が載った。中国の戦地で夫を亡くしたという女性の手記は「すっかり治ったと思ったあの古傷が、あの『軍人節』でうずき出した」とつづっている
▼4日後、女性に宛てた男性の投稿が載る。男性は戦地で「哀愁切々たるふるさとの民謡」に勇気づけられたと振り返り、「ご主人も口ずさんだでありましょう郷土の歌を、ご主人を愛された心で忘れず語りつごう」と説く
▼「軍人節」が流れる街で、夫を失った女性と、民謡に支えられた男性が戦争と向き合う。「やめて」「語りつごう」と互いの声は交わらぬが、いずれも戦争で傷つき、戦後を生きるウチナーンチュである
▼平和の衣を帯びた威勢良い軍国調の旋律が復活しないよう戦争を悲しむ歌に耳を傾けたい。「軍人節」は、出征する男が「国ぬ為でむぬ 思切りよ」(国のためだ。あきらめなさい)と女に別れを告げる場面を描く。この哀切を胸に刻み込もう。