<金口木舌>ラグビーの季節


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 久しぶりにラグビーの季節が来た。W杯で日本が世界ランク3位の強豪、南アフリカに逆転勝ち。残り時間わずかな中でスクラムを選択し、逆転トライを狙った。鮮やかな“番狂わせ”は、小説「ハリー・ポッター」の作者J・K・ローリングさんをして「こんな物語は書けない」と言わしめた

▼1980年代は花形スポーツだった。新春の国立競技場は晴れ着の女性が集まり、松任谷由実さんが高校ラグビー決勝戦から着想したという曲「NO SIDE」もヒットした。沖縄ではコザ高が県勢初の花園1勝を挙げた
▼しかしプロ化したサッカーに人気を奪われ、W杯も18戦連続未勝利と低迷。競技人口の減少も止められなかった
▼人気回復を狙い誘致した2019年W杯は新国立競技場建設が迷走した揚げ句、見直しとされた。会場変更を余儀なくされたラグビーにまでけちがついた格好だった
▼今回の勝利は、スポーツの主役は競技場という入れ物ではなく、選手であり知力を尽くしたプレーであることを再認識させてくれた。日本代表31人中、10人が外国出身という多国籍も魅力だ
▼チームワークを見れば「一人はみんなのために、みんなは一人のために」のラガー精神が浸透しているのが分かる。母が沖縄出身の田村優選手も活躍する。決勝トーナメント進出を期待しつつ楕円(だえん)のボールの行方を楽しみたい。