<金口木舌>嫌われる行政


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 窓口を訪れる市民には徹底的に嫌な思いをしてもらう。「嫌われる行政」を合言葉に、奇跡とも呼ばれる快挙を実現した施設が注目を集めている

▼2014年に成し遂げた快挙は「殺処分ゼロ」。施設は熊本市動物愛護センターだ。センターには飼い主が「噛(か)むような犬は育てられない」「弱って死んでいく様を見ていられない」などさまざまな理由で犬や猫を連れてくる
▼そのような飼い主に、センターの職員は時に声を荒らげて翻意を促す。殺処分をしなければならない場合には飼い主に犬を抱えさせ、注射を打つ。腕の中でけいれんしながら息絶える姿に、飼い主は命を奪うことへの罪の意識や後悔の念に駆られるだろう
▼動物愛護週間に合わせて25日、南城市大里の県動物愛護管理センターで動物慰霊祭が行われた。「不幸な動物を増やさないこと、愛情や責任を持って終生飼養することを希望する」。同センターの新里武則所長が訴えたように、殺処分の減少は全国的な課題だ
▼熊本市が行ったのは飼い主の説得だけではない。動物の心身を健康に保ち、新しい飼い主にもらわれるチャンスを増やすなどあらゆる手法を取った
▼熊本市の成功は行政の工夫によるところも大きい。だが一番重要なのは飼い主のモラルだ。安易に飼わない。最期まで世話をする。掛け替えのない命を大切にしたい。