<金口木舌>クバ・リブレの酸味


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 クバ・リブレというカクテルを知ったのは森瑤子さんの小説だったか。英語でキューバ・リバー、「キューバの自由」を意味する。米西戦争を経てキューバがスペインから独立した1900年代初めに生まれた

▼キューバ産ラム酒と米国を象徴するコーラを合わせたカクテルは、米国の支援で得た勝利を祝うにふさわしかったであろう。しかしその後の米国支配に反発を強めたキューバは59年に革命を起こし、2年後に国交を断絶する
▼ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王が19日からキューバと米国を訪問した。両国の国交回復を仲介した立役者は熱狂的な歓迎を受けた
▼社会問題に積極的に取り組み、自らの言葉で訴えることで宗教の枠を超えて支持を集める。ニューヨークのホームレス施設では「神の子もこの世にホームレスとして生まれてきた」と励ました
▼米連邦議会の演説では、イタリア移民2世である自身の出自に触れ「アメリカ大陸の人々は外国人を恐れない。なぜならわれわれの大半が外国人だったからだ」と語り、難民受け入れを促した
▼クバ・リブレはラムのアルコールとコーラの甘さにライムの酸味を利かせるのが肝らしい。2国間では成り立たなかった54年ぶりの国交回復も肝となる人がいた。法王が訴えた難民や軍縮、核廃絶。力によらない努力で解決の道を探れないものか。