<金口木舌>プライバシー時代の国勢調査


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 30年前の学生時代、東京で全国紙の世論調査員のアルバイトを何度か経験した。電話調査が主力の今とは違って、当時は大半が面接調査だった

▼一定地域の10人前後の対象者に直接会って答えてもらう。バイト代は2日間で1万5千円弱。学生には魅力的な額だった。半日で終われば割がいいが、現実はそうはいかない。対象者が不在だと夜まで足しげく通わないといけなかった
▼以前は自分で記入してしまう不心得な調査員もいたようで、不正防止のため生年月日を問う項目があった。初対面の調査員にほぼ全員が教えてくれた。今なら果たしてどうか
▼5年に1度の国勢調査が始まっている。国内に住む全員が対象の一大調査だ。調査員は7日の締め切りまで回収に何度も足を運ぶ。オートロックの集合住宅が増えるなど、戸別訪問は苦労が多かろう
▼プライバシー意識の高まりもあって回収率は低下している。対策として、ことしからインターネット回答が全国で導入された。シルバーウイーク中に締め切られ、国の予想を上回る約37%が回答した。沖縄は全国最下位の約23%にとどまった
▼この時期、調査員が書類を紛失したというニュースも流れる。個人情報漏れを気にしないで済むネット回答は有効だ。期間の拡大など改善の余地はある。国の政策に生かす大事な調査。時代に即した在り方が望まれる。