<金口木舌>その指摘は当たらない


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 「その指摘は全く当たらない」「よく意味が分からないというのが率直なところだ」。自分をツイッターで批判する書き込みに対し、木で鼻をくくったような回答が話題になっている

▼回答の主はドキュメンタリー映画「選挙」などで知られる映画監督の想田和弘さん。目的を問う書き込みには「目的の問題ではない。粛々と進めるだけ」といった具合に。批判が続いても、同様な回答を延々と繰り返す
▼笑えるが笑えない。実は菅義偉官房長官が会見などで実際に述べたことをコピーしているだけだからだ。回答には「#菅官房長官語で答える」という目印が付く。こつは「相手の質問や攻撃に対して決して答えないこと」
▼会話しているようで何も説明していない。誠意がないどころか、コミュニケーションの遮断だ。次第に反論の気持ちもなえるのが「無敵」との声も上がる、この論法の怖さだ。想田さんは民主主義を根底からむしばむと危惧する
▼安倍政権前の東京報道部時代、判で押したような閣僚の答弁に悔しい思いを何度もした。何も菅氏だけでない。だが安倍政権が違うのは、この論法による言動が政権を貫いていることだ
▼国民の声に耳を傾けず、政権の主張だけを押し通すのは民主主義の否定に違いない。会話がないと「平和」は保てない。コミュニケーションを封じる政権が治める国の行く末は空恐ろしい。