沖縄が強いられている不条理を、不断に国際社会に訴えていかなければならない。
玉城デニー知事は、スイス・ジュネーブでの国連人権理事会訪問の全日程を終え、23日に帰沖した。
18日(日本時間19日)の国連人権理事会での演説で、辺野古新基地建設を強行する日米両政府の不当性を強く訴えたほか、沖縄県に在日米軍専用施設の約70%が集中することにより「平和が脅かされ、意思決定への平等な参加が阻害されている」と述べた。3回を予定していた演説は、時間切れのためこの1回となったが、沖縄の現状を訴えるまたとない機会となった。
人権理事会以外の場でもNGO市民外交センター主催のシンポジウムで講演し、新基地建設の問題や米軍基地から派生する騒音、環境問題などを取り上げ「沖縄で起きている問題は人権や民主主義、環境の問題など世界の共通の問題であり、共に考えてもらえればと思う」と呼びかけた。
また国連の特別報告者との面談では、基地問題など沖縄の実情を調査するよう求めたほか、国連軍縮事務所ジュネーブ事務所長、国連難民高等弁務官事務所の弁務官補、国際秩序に関する独立専門家らとも面談した。
玉城知事の国連演説は、2015年の翁長雄志前知事以来だが、現状は改善されないままだ。日米両政府は辺野古新基地に反対する民意を顧みず、米軍基地によって沖縄県民の人権が侵害されている状況を放置している。
この現実を国際社会はどう見るのか。17年、国連人権理事会の作業部会が採択した日本に対する勧告で、沖縄の人々をはじめ少数派の人たちの社会権保障を強化すべきだとの意見が盛り込まれた。徐々にではあるが国際社会における沖縄に対する関心は広がり始めている。玉城知事は今回の国連訪問を手始めに、より積極的な独自外交、地域外交を進める必要がある。
県は4月に地域外交室を設置、地域外交の基本方針の検討を進めている。そのたたき台として「アジア・太平洋地域の平和構築に貢献する」など3本柱が示された。今回、知事が面談した国連関係者や特別報告者の知見やアドバイスを地域外交に生かし、継続していくことが訪問の成果を具体化させることになる。
知事は18日の演説で、16年に国連総会で採択された「平和への権利宣言」に触れ、「『平和への権利』を私たちの地域において具体化するよう、関係政府による外交努力の強化を要請する」と述べた。
覇権主義的な動きを強める中国を念頭に、日本政府は南西諸島での防衛力強化を進めている。力に力で対抗するだけでは、地域の緊張を高め不測の事態を招く恐れもある。沖縄県民や周辺諸国・地域の人々の「平和への権利」を守るためにも、玉城知事は対話を促す地域外交、自治体外交に取り組んでほしい。