<社説>政治資金裏金疑惑 「訂正」では済まされない


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<社説>政治資金裏金疑惑 「訂正」では済まされない
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 また「事務的ミス」と強弁するつもりなのか。

 自民党派閥の政治団体による政治資金パーティーを巡り、安倍派(清和政策研究会)がパーティー券のノルマを超えて所属議員が集めた分について、議員側に還流させる「キックバック」を続けていた疑惑が浮上した。政治資金収支報告書に記載されず、2022年までの5年間で1億円以上が裏金になった可能性がある。
 関係者によると、自民党の各派閥は、1枚2万円が相場のパーティー券の販売ノルマを所属議員に課している。ノルマを超えた分は派閥から議員に還流される運用があるという。
 収支報告書に記載されなければ、出入り不明の裏金として議員の収入になり得る。東京地検特捜部は、政治資金規正法違反疑いでの立件を視野に調べている。特捜部には徹底した疑惑究明を求めたい。
 政治資金パーティーは、政治家や政治団体が活動資金を得るために開かれる。政治資金規正法では、集めた金額から経費を差し引いた残額を政治活動に充てることを認めている。
 年間5万円を超える寄付は収支報告書に記載する必要があるが、パーティー券は20万円以下であれば記載の必要はない。企業などが見返りを求めパーティー券を購入しても、収支報告書に記載がなければ公にならない裏金となる。政治資金規正法の「抜け穴」を利用した裏金作りが長く続いているのではないか。
 そもそも、何のために所属議員に還流させる必要があるのか。国会議員には、月額129万4千円(衆参の議長、副議長除く)の歳費がある。このほかにも年2回の期末手当、文書通信交通滞在費なども支給されている。政党には政党交付金もある。
 政治活動に金がかかるとするならば、金がかからない政治活動の在り方を議論すべきだ。国民へ公にできない理由は何か。公にできない金は何に使われているのか。説明責任が求められる。
 政治資金パーティーを巡っては、自民5派閥の政治団体が、収支報告書にパーティーの収入計約4千万円を過少記載したとする告発状を受け、特捜部が担当者らを任意で事情聴取していることも明らかになっている。
 各派閥は「事務的ミス」として収支報告書を訂正したという。
 訂正では済まされない。収支報告書の不記載、虚偽記入は法律違反だ。国会議員が法に抵触する行為をしたにもかかわらず、訂正すればよい、という認識ならば、国民の政治に対する不信はますます大きくなるだけだ。
 「政治とカネ」の問題は、自民党に限らず、各党がそれぞれ議論すべき課題だ。「抜け穴」が指摘される政治資金規正法の改正を念頭に、国民の政治不信を払拭する取り組みを求めたい。