<社説>慰霊の日 平和への一歩刻む日に

 核兵器と平和構築を巡る慌ただしい動きの中で、私たちは戦後73年の「慰霊の日」を迎えた。平和への確実な一歩を刻む日としたい。

 トランプ米大統領との初会談で、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は「朝鮮半島の完全非核化」を約束した。トランプ氏は非核化に向けた対話の継続中は米韓合同軍事演習を中止する意向を示し、米韓両国は8月に予定していた軍事演習の中止で合意した。
 この劇的な合意を日本は果たして予想し得ただろうか。朝鮮半島の非核化と軍事的緊張緩和に向けた動きの中で日本の役割を考えるべきだ。米国、中国、韓国との連携を緊密にする必要がある。さらに、60年以上休戦状態にある朝鮮戦争の終結を求めたい。
 朝鮮戦争が終結すれば、在沖米軍基地の性格は変化を迫られる。政府が喧伝(けんでん)してきた
「北朝鮮の脅威」がなくなれば、
在沖米軍基地の「抑止力」は根拠を失う。辺野古新基地を建設する必要も当然なくなる。
 毎年の慰霊の日に、私たちは沖縄戦の犠牲者を悼み、基地のない平和な沖縄の実現を希求してきた。県民の願いが今年ほど具体性を帯びたことはなかったであろう。
 私たちは沖縄全戦没者追悼式における安倍晋三首相の発言に注目している。米朝首脳会談における共同宣言、米韓合同軍事演習中止を踏まえ、沖縄の米軍基地負担の是正に向けた方策を提示すべきだ。
 残念ながら政府は県民の願いとは逆の方向に突き進んでいる。辺野古新基地に関して沖縄防衛局は8月17日に土砂を投入すると県に通知した。実行に移せば、大浦湾の生物多様性は取り返しがつかないほど破壊される。
 宮古、八重山では住民意思が二分する中で陸上自衛隊配備が進められている。軍事的緊張を高める可能性は十分にある。住民の住環境への影響も出てこよう。
 そして憲法である。憲法9条の改正を目指す安倍首相は今年3月の自民党大会で「憲法にしっかりと自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打とう」と宣言した。灰燼(かいじん)に帰した国土の中から日本国民が手にした財産の一つである平和憲法の条文が改められようとしている。
 朝鮮半島の緊張緩和が現実味を帯びている今、日本はどの方向へ向かうのか。慰霊の日に見定め、沖縄が進むべき道を改めて確認したい。
 名護市の民間地で銃弾のようなものが見つかった。米軍の演習場から飛んできた可能性がある。県民は今も米軍演習に生命を脅かされている。
 沖縄戦で鉄血勤皇隊や学徒隊などとして戦場に動員された元学徒が4月、旧制中学や師範学校における動員の実態解明と戦争体験の継承を求め「元全学徒の会」を組織した。
 自らが体験した悲劇を繰り返さないという意思に基づく行動でもある。私たちは元学徒の思いも胸に、平和の歩みを続けなければならない。