男性カップルに、事実婚関係であることを示す「夫(未届)」と続柄欄に記載した住民票を交付した、長崎県大村市の園田裕史市長は28日、市役所で記者会見し、記載は「自治事務として市の裁量の範囲内で対応した」と説明した。一方で「一般的な事実婚と同様という認識はない」とも述べ、事実婚の異性カップルと同様に権利を保護するかどうかは、行政機関などごとに判断するとの考えを示した。
市によると、男性カップルの関係は「内縁の夫婦に準ずる」と判断。昨年導入したパートナーシップ宣誓制度の受領証の所持を確認した上で2日、「夫(未届)」の続柄で世帯合併を受理した。
男性カップルも28日、大村市内で取材に応じた。松浦慶太さん(38)は「こんなことが起こるなんて、と驚いた」と笑顔。パートナーで「夫(未届)」の続柄になった藤山裕太郎さん(39)は「前例がないような先進的なことを大村市がしてくれることは、自分たちの後押し、励みになる」と喜びをかみしめた。
住民票で同性パートナーの続柄は「同居人」「縁故者」などと書くのが一般的とされる。総務省は大村市の措置について「容認できるかどうか検討が必要」としている。
同性カップル「突破口に」
「認められなかった権利が認められていく突破口になる」。長崎県大村市から事実婚関係を示す住民票を交付された同性カップルの松浦慶太さん(38)と藤山裕太郎さん(39)。28日、隣り合って記者会見に臨み、全国への波及と同性婚実現への期待を笑顔で語った。
2018年に出会い、今年3月に兵庫県から大村市に転居した。今月2日、世帯主の松浦さんが受け取った住民票には、藤山さんの続柄が「夫(未届)」と記されていた。松浦さんは「それまで『夫』と書かれた書類は一つもなかった。やった、と言うのが抑えられなかった」と声を弾ませた。
実際に事実婚と同様の権利が認められるかどうか、まだ分からない。「論理的に考えれば認められるはず。平等に扱うべきと主張する根拠が一つできた」と力を込めた。
藤山さんは「先進的なことをしてくれ、励みになる」と笑みを見せ、同じ対応を取る自治体が増えてほしいと願った。
(共同通信)