いったい誰が… 丹精込めて育てたツバキ、折られる 「楽しみ摘み取らないで」 浦添・大平特支前バス停そば、市民ボランティアで再生した花壇


いったい誰が… 丹精込めて育てたツバキ、折られる 「楽しみ摘み取らないで」 浦添・大平特支前バス停そば、市民ボランティアで再生した花壇 折られたツバキの枝の根元を指さす新垣清子さん=24日、浦添市
この記事を書いた人 Avatar photo 藤村 謙吾

 【浦添】浦添市の大平特別支援学校前のバス停そばにある花壇(通称「大とくの庭」)で22日までに、大輪の花を咲かせていたツバキの一部が折られていた。ボランティアで花壇の手入れをしている新垣安伴さん(70)、清子さん(70)夫妻が見つけた。清子さんは「いつもと風景が明らかに変わっているので驚いた。写真はいくらでも撮って良いが、花を採っていくのはやめてほしい」と訴える。

 もともと大平特別支援学校前のバス停そばの花壇は、雑草が生い茂り、ごみが散乱していた。2018年に県が除草や樹木の伐採をし、一帯は土だけの状態に戻った。新垣夫妻は同年9月に、地域住民や大平特別支援学校関係者らで「大平美(ちゅ)ら花咲かせ多志(たい)」を結成し、花壇の再生に取り組んできた。

折られる前のツバキ。五つ以上の花が咲いた枝が折られた(新垣夫妻提供)

 新型コロナウイルスの流行を機に多くのメンバーが集まり作業する機会は減ったが、新垣夫妻は足しげく花壇に通い、手入れを続けてきた。沿道を通る人々に楽しんでもらおうとクメノサクラやクメクレナイなど、美しい花木をときに自費で購入して植え、約110メートルの沿道を春夏秋冬花の絶えない場所にした。

 活動が認められ、県緑化推進委員会が主催する「2023年度緑化コンクール」で「緑化功労者の部(会長賞)」表彰にも選ばれた。夫妻の表彰を報じる記事が新聞に掲載されるなどしたため、ツバキが折られた時期は、花壇を見に訪れる人が普段より増えていたという。

 折られたツバキは「ファイヤーダンス」という種類で、真っ赤な花を咲かせる。花木を愛する新垣夫妻に共感した井上盛吉さん(79)が、15センチほどの挿し木苗から育て植樹した。6年かけ、約150センチにまで育てた。井上さんは「折ってまで持っていく人の気持ちが分からない。でも、花が好きな人は憎めない。折る前に、『欲しい』など、声を掛けてくれれば何かやってあげられることもあったかも」と残念がる。

 安伴さんは「地域の子どもたちも、花を見るのを楽しんでくれている。楽しみを、摘み取らないようにしてほしい」と呼びかけた。

 (藤村謙吾)