沖縄県名護市辺野古への米軍新基地建設に向けた大浦湾のサンゴ類移植を巡り、沖縄防衛局の特別採捕(移植)を許可するよう、農林水産相が県に是正指示したのは違法だとして、県が指示取り消しを求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(林道晴裁判長)は6日、県側の上告を棄却した。農相の指示は適法だとした福岡高裁那覇支部判決が是認され、県の敗訴が確定した。裁判官5人中、2人が反対意見を付けた。
判決後の記者会見で、玉城デニー知事は「上告棄却という結果ではあったものの、県の主張が認められた画期的な反対意見が付された」と強調した。
防衛局は2019年、県に計約4万群体のサンゴ類の移植許可を申請した。埋め立て予定地に軟弱地盤があると明らかになり県が判断を保留する中、農相は昨年2月、防衛局の申請通りに移植を許可するよう県に是正を指示した。県は国の第三者機関「国地方係争処理委員会」に審査を申し出たものの退けられ、昨年7月に福岡高裁那覇支部に提訴した。
県側は、軟弱地盤の判明により設計概要の変更申請が行われる見込みの段階で、埋め立てが完成するかどうかが不確定だったと主張。移植を許可すべきかどうか判断できないとしていたが、第3小法廷は、沖縄防衛局が軟弱地盤の区域外の護岸工事を実施できる地位があったとした。工事によってサンゴが死滅する恐れがあるとし「サンゴを避難させるため移植する必要があった」と判断した。
県の判断は「護岸工事を事実上停止させ、防衛局の地位を侵害するという不合理な結果を招く」として、「裁量権の範囲の逸脱または乱用に当たる」と認定した。
反対意見は、行政法学者出身の宇賀克也裁判官と、弁護士出身の宮崎裕子裁判官の2人。今回申請されたサンゴ類が軟弱地盤の区域外にあるとしつつ、設計概要の変更申請が不承認になった場合、護岸工事は無意味になると指摘。変更申請がされていない状況で、サンゴの移植を許可すべきかどうかの情報が十分に得られていなかったとして、「県が許可しなかったことに違法性がない」とした。