沖縄セルラー電話(那覇市)とNTT西日本(大阪)、ソフトバンク(東京)の3社は13日、沖縄本島、石垣島、宮古島、久米島を結ぶ光海底ケーブルの共同整備事業が完了したことを発表した。各社とも7月から石垣島、宮古島、久米島で第5世代(5G)移動通信システムなど通信の高速化、大容量化が可能となった。
競合する3社が共同でプロジェクトを実施するのは初めて。離島地域の安定的な通信環境の実現へ、2022年1月に締結した協定に基づき、共同で光海底ケーブル「YUI」を沖縄本島-石垣島(約460キロメートル)、宮古島-久米島(約260キロメートル)の2区間に新設した。
60テラビット毎秒以上の信号伝送が可能な最先端の光波長多重伝送方式を採用。波長が異なる複数の光信号を1本の光ファイバーに同時に乗せてケーブルの大容量化を実現した。石垣島には22年12月に石垣海底線陸揚局も新設し、災害時への対応力も強化した。
総事業費は非公開。県とNTT西日本が保有する既存のケーブルと接続することにより、整備費用を抑えたという。各社の離島地域での5Gエリア拡大、多様な機器を通信でつなぐモノのインターネット(IoT)技術や、進化・高度化した情報技術を浸透させることで人々の生活をより良いものへシフトさせるデジタルフォーメーション(DX)の推進も期待される。
沖縄セルラー電話の菅隆志社長は「日ごろは競争相手だが、離島エリアの通信強化という共通の目的を持って協力した」と述べた。同社によると、5G全島人口カバー率は昨年末の時点で92%。光海底ケーブルの新設により、本年度末までに95%達成を目指す。
NTT西日本の桂一詞常務は「通信インフラを守り運用することは重要な役割だ。安定した通信サービスを確保し、沖縄の発展に寄与したい」、ソフトバンクの佃英幸専務は「単独では難しい大規模整備を3社が協力して実現させたことは大きな成果だ。質の高い社会ネットワーク構築のため今後も努力する」と述べた。
3社は会見に先立ち、県庁に玉城デニー知事を訪ね、整備完了を報告した。玉城知事は「通信環境の強化は離島地域社会の活性化につながる」として、安定した通信環境の実現に期待を寄せた。
(普天間伊織)