辺野古の新護岸着工 大浦湾側 国、県民投票前に強行


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名護市辺野古沿岸部で新たに造成が始まった護岸(中央)=28日午後4時48分(共同通信社機から)

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設で沖縄防衛局は28日、大浦湾側の護岸「N4」(全長135メートル)の建設に着手した。辺野古移設の賛否を問う2月24日の県民投票まで1カ月を切る中で、政府が工事を加速させた格好。N4の完成後は、沖合に向かって伸びる護岸「K8」の建設にも着手する。K8の建設場所の海底にはサンゴが確認されているが、防衛局は移植せずに護岸の一部の工事を進めることが可能との認識を示している。完成後は両護岸を桟橋として資材の陸揚げに活用し、埋め立てを加速させる狙いがある。新たな護岸工事への着手は、県が埋め立て承認を撤回した昨年8月以降初めて。

 着工したN4護岸は辺野古崎の先の部分から東向けに伸びる。全体の護岸では8カ所目の着工となる。28日午前11時すぎには、運搬車で運んだ砕石を砂浜に敷き、ショベルカーで固める作業が確認された。市民らは大浦湾海上や米軍キャンプ・シュワブゲート前などで抗議行動を展開し「違法工事をやめろ」「埋め立てをやめろ」などと声を上げた。

 K8護岸の海底にあるサンゴを巡っては、県は埋め立て承認を撤回していることを理由にサンゴの移植許可を出していない。しかし防衛局が22日に開いた環境監視等委員会は「サンゴを移植せずに護岸建設を進めることができる」と確認した。防衛局は全長約515メートルのうち、サンゴまで約50メートルの距離にまで迫る250メートル分はサンゴに影響を与えずに工事が可能との認識を示している。

 一方、その後の工事ではサンゴを移植する必要があるほか、K8護岸の延長線上に現在政府が改良工事を予定している軟弱地盤が存在する海域があるため、工事の見通しは立っていない。

 28日は埋め立て区域への土砂投入作業や工事関係車両による米軍キャンプ・シュワブ内への資材搬入、名護市安和の琉球セメント桟橋での運搬船への土砂の積み込みも確認された。

新区域土砂投入へ加速/国、停滞印象の払拭狙いも

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設で沖縄防衛局が新たに護岸「N4」に着工したのは、3月25日にも新たな区域へ土砂を投入する計画と連動している。陸揚げ場所を増やすことで、政府は工事を加速させることができる。軟弱地盤があるために着工できていない大浦湾側で新たな護岸に着工することにより、大浦湾側の行き詰まった印象を打ち消す意図も透ける。

 防衛局は現在、土砂を投入している埋め立て区域に加え、隣接する広範な区域でも土砂の投入を始める方針だ。

 しかし辺野古新基地建設に関して海上からの資材陸揚げに使っているのは大浦湾の最も北側にあるK9護岸のみで、土砂の供給は限定的だ。作業効率を上げるため、28日に着手したN4護岸とその後に続くK8護岸の一部を早期に建設し、陸揚げ場所として使う算段とみられる。

 N4の建設が予定される大浦湾側では軟弱地盤に対応するため地盤改良工事が必要となる見通しだ。県は完成に13年以上かかり、費用も2兆5500億円に膨らむと独自の試算を示し、新基地建設のハードルの高さを指摘する。政府は軟弱地盤が存在する一帯の護岸の造成費用について2019年度予算への計上を見送っている。

 2月24日に県民投票が全県で実施される公算が大きくなる中、政府としては工事を前進させることで停滞の印象を払拭(ふっしょく)し、県民の諦めを誘う狙いもあるとみられる。

 県は今後、防衛局に対し工事中止を求める行政指導をする方針だ。防衛局はこれまで県の指導に従わず工事を続けてきた。県民投票を前に県の指導に耳を傾けない政府の姿勢が前面に出れば、県民の反発を招き、諦めを誘う狙いと逆効果となる可能性もある。 (明真南斗)

防衛局を行政指導へ/県方針 副知事が政府批判

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を進める沖縄防衛局が新たな護岸建設に着手したことを受け、県は28日、防衛局に工事中止を求めて改めて行政指導をする方針を固めた。

 県幹部は週内にも指導文書を発出したい考えを示した。

 謝花喜一郎副知事は同日、記者団の取材に「埋め立て承認を撤回し、何も解決していない中で着工するのはおかしい。我々は納得していない」と批判した。また「本来なら護岸を造成するにはサンゴの移植も必要だ。ただ県としては承認を撤回しているので、移植許可を認めていない」と説明した。