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<書評>『沖縄ともろさわようこ』 世界に通用する答えはある


<書評>『沖縄ともろさわようこ』 世界に通用する答えはある 『沖縄ともろさわようこ』源啓美、河原千春編 不二出版・4950円
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 「希望を持ちたい」と読み進むうちに思った。凄絶(せいぜつ)な沖縄女性たちの鬱積(うっせき)する社会問題を、張り切って考え動く気力は今の自分には薄れ、大したこともしていないのにものすごく疲れ、力が抜けていた。続く基地問題や差別の構造、沖縄の置かれた状況に「にじららん(我慢できない)」思いだ。砕ける県民の意志。葛藤、しがらみ、新しい世界を欲する人たち。それでもあきらめずに闘い続ける県民、それを応援する県外の人たち。後ろめたさも感じつつ、悶々とした時間の中で目の前に現れた本だった。

 宮古島のウヤガン祭祀(さいし)、久高島のイザイホー、さらには中部のストリップショーを見学され、出会った女性たちの日常活動、戦争体験を細かに拾い集めて記録されたもろさわさんの行動力により、知らなかった沖縄の世界も広がった。パチーンとほっぺたを叩かれたようだ。自分の中で学んだはずのことも置き去りにしていた。「すでに大切なメッセージは受け取っていたのに」という気にもなった。

 私は八重山のアカマタクロマタを見学した時、その声を聴きながら吐いた。自分の中に不純物があるかもしれぬと感じ、本当に神様はいると知った。

 「沖縄に申し訳なさ過ぎて訪問できなかった」。脱原発を提唱する小出裕章さんは、沖国大に米軍ヘリ墜落後の放射能汚染に関する講演会に招聘(しょうへい)され、役割を持ったことで初めて沖縄を訪れた。彼の「基地問題も原発の問題も根は一つ」の言葉を思い出した。沖縄から外を見る県外者の気持ち。もろさわさんも同じように、沖縄から人としての権利を持つ生き方に普遍性を見出そうとしていると感じた。

 観光地としての沖縄の表層にある文化や自然だけではなく、土臭い、消えかかる祭祀文化や沖縄戦体験、それに続くアメリカ世の日常生活から学んだ、人としての生きざま。その中に、どこの世界にでも通用する「希望」や「信念」になりうる答えが見つけられるよ、とこの本は熱く強く伝えている。

 (平良次子・南風原文化センター学芸員)


 みなもと・ひろみ 1948年渡嘉敷村生まれ、67年ラジオ沖縄入社。沖縄、女性、環境、人権などをテーマに取材・番組制作。

 かわはら・ちはる 1982年横浜市生まれ。2007年信濃毎日新聞入社。著書に「志縁のおんな―もろさわようことわたしたち」など。