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<書評>『豊里友行写真集 那覇市第一牧志公設市場』 子どもたちに重ねる未来


<書評>『豊里友行写真集 那覇市第一牧志公設市場』 子どもたちに重ねる未来 『豊里友行写真集 那覇市第一牧志公設市場』豊里友行著 沖縄書房・1650円
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 著者、豊里友行は1976年、沖縄市で生まれた。コザ高校で野ざらし延男に俳句を学び、俳人として今に至る。1999年に東京渋谷の日本写真芸術専門学校を卒業し、その春、「沖縄を撮る」という初心を行動に移すため帰沖。沖縄の激動の歴史の一片一片を表現しようと、沖縄戦の遺骨収集の国吉勇さんに同行して2021年「沖縄戦の戦争遺品」を発行、また「辺野古」の住民運動の写真集を発行するなど、こつこつと写真活動を展開している社会派でもある。

 わが家は1996年まで大衆食堂を営んでいた。父が朝、自転車の荷台に竹籠を乗せて第一牧志公設市場に仕入れに行っていたので市場は日常そのもの。私も小学6年には手伝いで市場に通いだした。市場の肉屋さん、外側の八百屋さんには父の息子ということでかわいがってもらった。入口近くで冷しコーヒー、ミキを飲んだりもした。

 そんな第一牧志公設市場が建て替えられることになり、話題になった。那覇市歴史博物館も「那覇の市場」展を開催した。著者は1999年から毎年、盆と大みそかにはごった返す旧公設市場に通い、2019年に写真集「市場んちゅ―那覇市第一牧志公設市場」を発行した。

 そして今回発行した「豊里友行写真集那覇市第一牧志公設市場」には、建て替え前後の市場の人々の表情を収めている。色彩豊かな魚、らっきょう、いらぶー、スクガラス、かまぼこ、ポーク缶詰と同時に、市場んちゅの休みなく働く手も写っている。商品プラスアルファは、愛情表現で「てぃーあんだ」ともいう。著者は「市場の醍醐味(だいごみ)は、市場の人とお客さんの相対にあるようだ。これからも多くの人たちが市場の魅力を求めて、沖縄の食文化を育む市場に足を運んでほしい」と結ぶ。

 豊里の写真集には家族や子どもたちがよく登場する。今回発行の写真集にも「お店の忙しいときは孫も手伝う」と、最後のページには幼い子が一人立っている。今も昔も変わらない子どもたちの姿に、沖縄の未来を重ねているのかもしれない。

 (新城栄徳・「琉文21」主宰)


 とよざと・ともゆき 1976年沖縄県生まれ。俳人、写真家。2017年、写真集「オキナワンブルー 抗う海と集魂の唄」で、さがみはら写真新人奨励賞受賞。