未発表19作品 出版 大城貞俊さん 又吉栄喜論も1冊に


未発表19作品 出版 大城貞俊さん 又吉栄喜論も1冊に 自身の未発表作品集と著書「又吉栄喜をどう読むか」を発刊した作家の大城貞俊さん(左)。右は大城さんの新刊に期待を寄せる又吉栄喜さん=20日、那覇市の琉球新報社
この記事を書いた人 Avatar photo 高江洲 洋子

 作家の大城貞俊さんが10月から11月にかけて、自身の未発表作品を収めた作品集(全4巻)と、芥川賞作家の又吉栄喜さんに焦点を当てた「土地の記憶に対峙する文学の力~又吉栄喜をどう読むか」を相次いで発刊した。未発表作品集に収めた小説は19作品。テーマは戦争体験や人生をむしばむ戦争の「記憶」、生と死、恋愛など多様性に富んでいる。共通点は沖縄を舞台に、沖縄を根っこに生きる人々を描いたこと。沖縄という土地の力から生まれた珠玉の文学を味わうことができる。

 大城さんは「椎の川」で具志川市文学賞(1992年)を受賞した。2017年には「チムグリサ沖縄」で第34回さきがけ文学賞を受賞している。

 20日に琉球新報社を訪れた大城さんは、未発表作品集の発刊について「50年近く書いてきたが、手元の未発表作品を整理し、ここで立ち止まって表現者としての活動を見つめ直そうと考えた」ときっかけを語った。

 同作品集は第1巻~第3巻が小説で「遠い空」「逆愛」「私に似た人」とそれぞれ題名を付けた。第4巻は朗読劇・戯曲脚本をまとめている。各巻には文学研究者による解説が記され、作品と重ねて読むと味わいが増す。大城さんは読者に向けて「さまざまな小説の方法論を駆使した。沖縄をテーマに書いている人に批判的に読んでほしい」と願った。

 著書「又吉栄喜をどう読むか」は又吉文学の代表作「海は蒼く」「ジョージが射殺した猪」「豚の報い」「ターナーの耳」「亀岩奇談」などをテキストに、文学研究者でもある大城さんの視点から豊饒(ほうじょう)な作品世界の魅力と魔力を分析した。又吉作品を巡っては個々の作品論はあるが、評論集的に一冊にまとめたのは初めてという。又吉さんは「出身地の浦添の『原風景』や年中行事、暮らしを主に描いてきた。僕の人生が深く投影されている」と評した。

 「大城貞俊未発表作品集第1~4巻」(各2200円)と「又吉栄喜をどう読むか」(2530円)はインパクト出版会から発刊されている。県内の主要書店で販売。

 問い合わせは同出版会、電話03(3818)7576。

 (高江洲洋子)