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伝統の発信と継承を支え20年 国立劇場おきなわ 組踊伝承者を輩出、新時代へ


伝統の発信と継承を支え20年 国立劇場おきなわ 組踊伝承者を輩出、新時代へ 組踊「執心鐘入」より、座主らと相対する鬼女となった宿の女(左)=2010年10月、浦添市の国立劇場おきなわ
この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

 2024年1月18日で、国立劇場おきなわの開場から20年を迎える。国指定重要無形文化財「組踊」をはじめとする琉球芸能の公演や伝承者育成、調査研究など、伝統の発信と継承を支える拠点となった。コロナ禍を経た劇場はさらなる発展に向けて、新たに動き出す。開場までの道のりと20年の歩みを改めて振り返る。

組踊伝承者、中心的演者に

 国立劇場おきなわ建設に向けた動きは、1972年に国指定重要無形文化財に指定された組踊の専門施設「組踊劇場」誘致を目的に、始まった。

 74年、組踊実演家の眞境名由康氏を会長に沖縄伝統芸能館設置促進委員会が設立された。1991年には経済界から稲嶺恵一氏を会長に、副会長に作家の大城立裕氏、実演家から金武良章氏が就任した国立組踊劇場(仮称)誘致促進期成会を結成した。国への働きかけを続ける中、96年に「沖縄政策協議会」で国立組踊劇場の設立が沖縄振興策の重要プロジェクトに位置づけられる。2004年、組踊「万歳敵討」ゆかりの地である浦添市小湾に開場した。

 長年の課題だったのが組踊継承者の育成だ。05年に伝承者養成研修を始め、23年3月までに57人が修了した。現在は組踊公演に欠かせない中心的な演者を輩出している。

 自主公演の入場者数は、休演が相次いだコロナ禍の20~21年で例年比の4~5割に減ったが、22年からコロナ前に戻りつつある。若い世代を含めた県内での浸透、県内外への周知など課題も多いが、伝統芸能の継承と発展に向け、劇場は新時代を迎える。

組踊「護佐丸敵討」であまおへ役を演じる二代目親泊興照=2016年1月、浦添市の国立劇場おきなわ
沖縄芝居「丘の一本松」の名場面。組踊や琉球舞踊、沖縄芝居など多彩な芸能が披露されている=2006年、浦添市の国立劇場おきなわ
国立劇場おきなわの外観
玉城満 国立劇場おきなわ常務理事
チャンプルー魂 伝統つなぐ

 国立劇場おきなわは開場以来20年、沖縄の伝統芸能を守り、継承してきた。玉城朝薫が創作した組踊は、若い後継者も育ち、順調に継承されてきたと言える。

 玉城朝薫は、琉球本来の芸能に能や歌舞伎、アジアの芸能を融合させ組踊を創作した。まさに「チャンプルー文化」によって生み出した。この朝薫のスピリットを引き継いできたか今再考する必要がある。

 これからは組踊、歌劇、沖縄芝居、琉球舞踊などで、伝統を基盤とした新しい芸能を創作していきたい。朝薫のチャンプルースピリットを育むことが、今後沖縄の伝統をつなぐことになるはずだ。