国立劇場おきなわの公演記録鑑賞と講座「からくり花火―琉球と近世日本―」が15日、浦添市の同劇場であった。19世紀に琉球王国で行われていた、からくり花火の中から「玉火」を復元し、講座終了後に劇場隣の組踊公園で実演した。花火と共に仕掛けが開く様子に、集まった観客は拍手を送った。
1866年の尚家文書「火花方日記」の研究を基に、同劇場は2019年から、からくり花火の復元に取り組んでいる。花火は冊封使を歓待する宴で実演されてきた。首里城の庭という場所の制限もあり、打ち上げ花火ではなく、噴き出し花火から降りかかる火の粉で点火し、仕掛けが動くからくり花火が考案された。「火花方日記」に記された花火は5基。今回の「玉火」は5基目で、これで全てが復元された。
「玉火」は上部に灯籠があり、ブドウとリスの絵が描かれている。点火後は灯籠の下から十二支と方位が書かれた円盤が現れ、両側から縁起物や宝物の飾りが飛び出す。灯籠の下のコイは点火後は龍になる。灯籠の上から吹き出し花火が出るフィナーレだ。実演では、仕掛けも全て手作りで用意された。今回は全ての仕掛けが順番通り開いて点火した。
仕掛けを作った金城裕幸さんは絵柄も全て担当し、「失敗続きだったから、うまくできてよかった」と胸をなで下ろした。
点火のタイミングが異なる2種類の導火線などを用い、時間差での点火を試みた。花火師で沖縄花火社長の金城義信さんは、予定外のタイミングで点火する「もらい火」がなく、順番通りに点火したことに「100%に近い出来」と笑顔を見せた。
からくり花火の調査研究を担当した茂木仁史調査研究専門嘱託員は「5基全てが復元できた。記録に残したい」と語った。秋には火薬から手作りした花火の実演も計画している。
花火の実演前の講演会では、琉球のからくり花火に加え、長野県の上清内路の手作り煙火や茨城県大塚戸のからくり綱火などの映像を鑑賞し、それぞれ解説した。
(田吹遥子)