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「大湾清之の世界」いざなう 人間国宝記念公演 国立劇場おきなわ 二大流派実演家ら出演


「大湾清之の世界」いざなう 人間国宝記念公演 国立劇場おきなわ 二大流派実演家ら出演 「赤田風節」を披露する大湾清之=5月25日、浦添市の国立劇場おきなわ
この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

 国立劇場おきなわの三線音楽公演「古典音楽の美~大湾清之人間国宝記念~」が5月25日、浦添市の同劇場で開かれた。「琉球古典音楽」人間国宝の大湾清之が復曲した楽曲や独唱など、大湾のこれまでの功績や魅力を届けた。琉球古典音楽の野村流と安冨祖流の二大流派を代表する実演家も多く出演し、上質な音色を響かせた。

 第1部では、大湾が復曲した「コハデサア節・伊江早作田節」の斉唱を披露した。「コハデサア節」は「屋嘉比工工四」に、「伊江早作田節」は川平親雲上朝彬(かびらぺーちんちょうひん)の「俗風工工四目録」に掲載されているが、いずれも節のみで、伝承が途絶えていた。大湾が県立芸大で学生と共に復曲し、「コハデサア節」は2005年、「伊江早作田節」は08年に初めて演奏された。同劇場企画公演としては19年以来。今回は県立芸大卒業生の実演家で披露した。

 第1部で中堅の実演家による独唱7題、第2部で重鎮の実演家らの独唱6題を届けた。長浜真輝は「屋慶名節」で、ハリのある歌声を響かせた。花城英樹は「白鳥節」を独特の節回しで味わい深く披露した。照喜名進の「仲村渠節」は、手様(てぃーよー)の動きが美しく、低音の奥深さに聞き入った。山城暁の「仲風節」は奥行きのある歌声が印象的だった。

 第2部の後半は「大湾清之の世界」と銘打ち、地謡や独唱で大湾の歌声を聞かせた。金武良章の振り付けで安座間本流に継承されている創作舞踊「ことぶき」は安座間明美、新垣満子、久手堅一子、木村清美、大湾三瑠、山城亜矢乃が踊った。祝儀舞踊らしく華やかな舞と歌声が印象的だった。

 続く「諸屯」は金城美枝子が踊った。大湾を始めとする地謡の奥深い歌声と、金城の三角目付の表情やわき出る気迫に、恋の切なさと内に秘める激しさを感じた。フィナーレは大湾の独唱で「赤田風節」を披露した。まろやかで奥行きのある中低音が心地よく、歌の世界へといざなった。

 独唱にはこのほか、松本紀、玉城悟、仲村渠達也、大城貴幸、横目大哉、城間盛久、宮城幸子、伊良波ゆかり、渡名喜康広が出演した。

(田吹遥子)