戦時中に沖縄から流出した文化財がこのほど米国で発見され、14日に県へ返還された。玉城デニー知事が15日の定例会見で発表した。返還された文化財は22点。第二尚氏第13代国王尚敬と第18代国王尚育の御後絵(おごえ)(琉球国王の肖像画)が含まれている。御後絵の実物が戦後確認されたのは初めて。
琉球文化研究者の鎌倉芳太郎が1925年に撮影したモノクロ写真が残されていたが、今回初めて実際の色彩が判明した。
返還された文化財は御後絵6点、地図1点、陶器、置物など。尚敬の御後絵は縦横約160センチ。尚育は縦横約150センチ。掛け軸に「尚清様」と書かれた御後絵もあり、鎌倉が撮影していない第4代国王尚清の御後絵である可能性がある。御後絵のうち3点は元は1点だったものを分割したとみられ、描かれているのが誰かは分かっていない。
県は2001年、御後絵など13点の流出文化財について米連邦捜査局(FBI)の盗難美術品ファイルに登録申請をした。23年3月、FBIから外務省を通じて、流出文化財22点が発見されたと県に照会があった。高解像度写真の提供を受け、県はこれらが沖縄戦で持ち出された文化財である可能性が「極めて高い」と判断し、移送を依頼した。FBIに登録した13点のうち、今回返還されたのは尚敬王、尚育王の御後絵の二つ。
県は有識者委員会を設置し、詳細について調査する。損傷状況に応じて公開を検討する。
玉城知事は会見で「七十数年の時を経て、王国時代を肌で感じられる沖縄の宝が戻ってきたことは大きな喜びだ」と述べた。
(伊佐尚記)
<用語>御後絵
琉球国王の肖像画。うちなーぐちの読みは「うぐい」。尚家の菩提(ぼだい)寺の円覚寺に壁画として描かれ、1817年ごろに掛け軸に描き写されたと考えられている。掛け軸の御後絵は明治の中頃に尚侯爵邸(中城御殿)に移された。