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御後絵、沖縄戦時に略奪 米退役軍人の私邸に保管 FBIが経緯公開


御後絵、沖縄戦時に略奪 米退役軍人の私邸に保管 FBIが経緯公開 FBIが公開した流出文化財の調査に関する動画の一場面。画面には尚育王の御後絵が映っている
この記事を書いた人 Avatar photo 当銘 千絵

 琉球国王の肖像画「御後絵(おごえ)」など22点の文化財が米国から県へこのほど返還された件を巡り、米連邦捜査局(FBI)は現地時間15日に、発見から返還までの経緯をFBIのホームページ上で明らかにした。これらの文化財は米マサチューセッツ州内にある退役軍人の私邸に保管されており、FBIの捜査の過程で遺品とともに手紙も見つかった。これが沖縄戦で略奪された文化財であることを裏付ける内容だったとしている。

 FBIによると、文化財を保管していた退役軍人はすでに死去しており、遺族が遺品整理をした際に邸宅の屋根裏から文化財を見つけた。退役軍人は第2次世界大戦に従軍したが、太平洋地域への配属はなかったという。

 遺族は、見つかった文化財のうち御後絵がFBIの盗難美術品ファイルに登録されている美術品と酷似していることから自ら通報した。これを受けFBIは2023年1月に捜査を開始した。同年3月、FBIは県教育委員会に高解像度の写真を提供し、県教委は沖縄戦で米国に持ち去られた可能性が極めて高い文化財だとして返還を求めた。

 文化財はその後、スミソニアン博物館へ移送。この時、巻かれた状態だった御後絵をほどく作業も行われ、状況から見て御後絵は何十年もそのままの状態だった可能性が高いと推測されたという。

 FBI美術犯罪チームのジェフリー・J・ケリー特別捜査官は「国の文化的アイデンティティーは工芸品や歴史に集約され、文化を作り上げる。それがなければ歴史を奪うことになる」と指摘した。

 ジョディ・コーエン特別捜査官も「今回、遺族が問題意識を持って正しい選択をしたからこそ、文化財の返還が実現した」と述べ、民間からの情報提供が盗難品の回収につながることもあるとして継続的な協力を呼びかけた。

 FBIは美術犯罪プログラムの開始以来、2万点以上(総額9億ドル以上)の美術品を回収しているという。

 (当銘千絵)