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深化の太鼓 圧巻舞台 比嘉聰 師の奥義と哲学継承 顕彰公演「光源の響き」 「自然美への接近」演出


深化の太鼓 圧巻舞台 比嘉聰 師の奥義と哲学継承 顕彰公演「光源の響き」 「自然美への接近」演出 幕開けの「瑞雲」を披露する比嘉聰(前列中央)ら
この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

 光史流太鼓保存会会長で「組踊音楽太鼓」人間国宝の比嘉聰の顕彰公演「光源の響き」が2月18日、浦添市の国立劇場おきなわであった。師である島袋光史家元の奥義と哲学を継承し、深化させた太鼓の響きが観客を魅了した。

 公演は、島袋光史が構成した器楽合奏「瑞雲(ずいうん)」で幕開け。総勢46人による演奏は壮大かつ厳かで、自然美への接近という光史の哲学を感じた。続く器楽合奏「バチ」は、比嘉の構成と演出の演目。暗闇の中でバチが光る演出から始まった。光史流の奥義「打つバチより打たぬバチこそ心配れ」が可視化され、光史流の技芸の深さを感じた。

 歌三線も研さんを積んだ比嘉は「赤田風節」で味わい深い歌声を披露した。

 創作「瑞雲に翔(しょう)」は、笛の音と共に踊り手が登場。太鼓の音に合わせて風に吹かれたように舞い踊る様子は、躍動感にあふれていた。創作「しまの祈り」は、比嘉の激しいバチさばきで大太鼓の鼓動が会場を震わせた。一転、比嘉が去って奏者のいない太鼓の周りに踊り手が集まり「浜千鳥」を踊った。まるで御嶽にチョウが群がるような様子は神秘的で、太鼓に宿る高い精神性を感じた。

 続く創作「世果報願い」では、「長刀」「加那ヨー天川」「ヤカラ」と多彩な舞踊の世界を緩急付けた太鼓の音色で彩った。伴奏楽器としての高みを披露した演目から一転、創作「鬼女」は太鼓が主となり舞との共演を果たした。「執心鐘入」で宿の女が鬼女へ変身する名場面の創作で島袋君子が舞った。比嘉の太鼓は、時に読経のように、時に心臓の鼓動のように、静と動を行き来して迫る鬼を追い返す。何度も共演を重ねた比嘉と君子の緊迫感のある演技は、観客を一気にその世界観に引き込んだ。

フィナーレの「彩」で若手の弟子らと共に笑顔で太鼓を打つ比嘉聰=2月18日、浦添市の国立劇場おきなわ
フィナーレの「彩」で若手の弟子らと共に笑顔で太鼓を打つ比嘉聰=2月18日、浦添市の国立劇場おきなわ

 フィナーレは器楽合奏で「彩(いろ)」を披露した。光史流太鼓保存会の若手中堅らと織りなす音色は明るくにぎやかで、希望に満ちていた。多くの弟子たちに囲まれ、比嘉の表情も和らいだ。師から継承した技芸を大切に次世代に伝えつつ、太鼓の可能性や楽しさを体いっぱいに感じさせる、圧巻の舞台だった。

 (田吹遥子)