『ストラトス・フォー』(2003―06)は、地球が絶えず彗星(すいせい)の接近と隕石(いんせき)落下の危険にさらされている近未来、国連の天体危機管理機構に所属する隕石(いんせき)迎撃部隊の一つが宮古の下地島に置かれているという設定だ。そこに4人の少女が候補生として配属され、訓練に励む。お約束の水着回も登場する美少女ミリタリー、いわゆる「萌えミリ」ものだが、「なぜ下地島なのか」という問いを発した途端にきな臭さが漂う。
本来の迎撃対象は隕石(いんせき)などではなく、仮想敵国があったのではないか。
実は本作と前後して、航空自衛隊や米軍の下地島空港利用誘致が問題化していた。「下地島空港を軍事利用しない」という国の確約や地域住民の反対もあって誘致は見送られたが、その過程で誘致を推進する側から「自衛隊は軍隊ではない」という発言があった。それは本作で機構の上層部が口にする「われわれの組織は軍隊ではない」というセリフと絶妙にシンクロしていた。
宮古島に自衛隊のミサイル部隊が配備され、大規模な弾薬庫も設置された現在から振り返ると、本作で沖縄本島出身の候補生が口にする「故郷の島に隕石(いんせき)のかけらも落とさない覚悟です」というセリフや、迎撃機の緊急着陸で宮古空港が閉鎖になる展開は、まるで下地島空港の基地化へ向けた地ならしのようだ。
一方、『ガーリー・エアフォース』(2019)は、超高度な戦闘力を持つ謎の敵性飛行体・ザイが中国全土をのみ込み、さらに日本を狙っているという設定だ。航空自衛隊は、撃墜したザイのコアから培養した美少女アニマの搭乗する高性能戦闘機を配備して対抗する。
主人公の少年・慧を美少女アニマや幼なじみが囲むハーレムアニメで、ラブコメ仕立てになっており、アニマたちが沖縄のビーチで水着になるシーンもあった。
やがてザイは石垣島から北へ150キロの島に前進基地を築こうとする。自衛隊の防衛ラインは南西諸島の連なりそのもので、中国に対して日米が想定する「第1列島線」とほぼ重なる。その最前線となるのが那覇基地だ。そして東シナ海で米第七艦隊、台湾空軍、航空自衛隊によるザイ阻止作戦が展開され、石垣島の陸上自衛隊からも攻撃が行われる。
さらに米軍は中国大陸に拠点を築くため、大規模艦隊による上海上陸作戦を敢行し、慧やアニマたちもこれに参加する。もちろん物語上の敵はザイなのだが、ザイが中国語の「災い」を意味する点も含め、対中国戦を意識したプロパガンダ色が感じられよう。
(世良利和・岡山大学大学院非常勤講師)