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ぐらんぶるの宮古島 島の風習オトーリ強調 <アニメは沖縄の夢を見るか>(41)


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挿絵・吉川由季恵

 『ぐらんぶる』(2018)は大学のダイビングサークルを描いたギャグ満載のラブコメだ。伊豆大学に入学した主人公の北原伊織は、ダイビングショップを経営する叔父の家に下宿することになる。10年ぶりに会ういとこたちはまぶしく成長していた。

 だが楽しい大学生活への期待とは裏腹に、伊織はイケメンでオタクの耕平とともにダイビングサークルの強引な勧誘に巻き込まれる。そこは筋骨隆々の男たちが意味もなく全裸になって連日大酒を飲むという異世界だった。ダイビングがテーマとなるにもかかわらず、随所に暑苦しい絵面や濃いギャグがはさまれる。

 そのシリーズ終盤で沖縄合宿が行われ、新入生にはダイビングのライセンス講習が待っていた。雑誌で見た宮古島の海に憧れる伊織たちは、出発を前にそれぞれ想像をふくらませる。飛行機やハイビスカス、ヤシの生えた浜辺に「沖縄到着だ」「めんそーれ!」といった沖縄をめぐるお約束の表現には、本土からの距離と地理的条件、言葉を含む文化の違いに、リゾート的な憧れとはしゃぐ気持ちが加味されている。

 島人のセリフは微妙なアクセントで沖縄風に表現され、「どうしたばー?」「はっさ」といった言葉が使われるほか、「浜崎の奥さん」「コウコウセイ」といったローカルな魚名ネタもさく裂する。この連載では水着回としての沖縄に何度も言及してきたが、本シリーズでも沖縄合宿はもちろん水着回だ。けれどもダイビングという設定に加えてもともと露出場面が多く、しかも局部を黒塗りされた野郎どもの全裸が常態化しているためか、印象は薄い。

 そして最終話、合宿の場所は沖縄から宮古島へと移る。ここでも到着すると「県内で飛行機に乗るなんて新鮮よね」「本島より台湾の方が近いらしいな」などと、誤情報も含めて地理的な遠さが強調される。そして先乗りしていた先輩たちが車で迎えてくれた際に、宮古式の酒の飲み方としてオトーリの話が出る。しかも「合宿の目的の8割はオトーリなんだぞ」と真相が明かされるのだ。

 もちろんダイビングの場面では宮古島の海が美しく描かれる。けれどもそれ以上にオトーリという島の風習が強調され、最後はサークル独自のハチャメチャなオトーリへとなだれ込む。物語が主人公の恋愛模様やダイビングの魅力へと向かうたびに、男たちの全裸やエロな妄想、酒のむちゃ飲みで脱線するのだが、萌え系のガールズアニメや特殊能力バトルものが幅を利かす中で、本作のバカバカしさは貴重だ。

 (世良利和・沖縄県立芸大芸術文化研究所共同研究員)