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名探偵コナンと金田一少年 沖縄舞台に描かれる事件 <アニメは沖縄の夢を見るか>(25)


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挿絵・吉川由季恵

 テレビ放映が千話を超えた「名探偵コナン」シリーズにも、沖縄が舞台となるエピソードがある。第291話から293話までは『孤島の姫と竜宮城』と題され、亀に似た形の無人島でテレビ番組のロケハン中に事件が起きる。スタッフの女性とクルーズ船の船長が殺害されるのだが、その背景には過去の誘拐事件や強盗殺人事件があった。沖縄に竜宮城のイメージを重ねる戦前からのパターンに水着回の役割も加味し、後生(ぐそー)の使いが機織り女の魂(まぶい)を取りに来る、という沖縄の昔話も盛り込まれている。

 また第371話&372話の『物言わぬ航路』では、那覇で自主トレ中のプロ野球選手が殺害され、飛行機の航路をめぐるアリバイ崩しが描かれる。本土からの入域経路が限られる沖縄の地理的条件とプロ野球のキャンプ地という特徴を組み合わせたエピソードだが、車のプレートは「沖縄」ではなく、すべて「琉球」ナンバーになっていた。

 対する「金田一少年の事件簿」シリーズでは、劇場版第2作『殺戮(さつりく)のディープブルー』(1999)で沖縄の離島を舞台にした事件が描かれている。金田一は幼なじみの美雪、いとこの二三と一緒に、オープン準備が進む紺碧(こんぺき)島のリゾートホテルに招かれる。招いたのは美雪の先輩・茜で、彼女はリゾート開発会社の社長令嬢だった。

 紺碧(こんぺき)島リゾートの目玉は、与那国島を思わせる海底の古代遺跡だ。ところが開発会社には、キングシーサーを名乗る人物から「聖なる神殿を荒らす者はひとり残らず死に絶えるであろう」という脅迫状が届いていた。やがて開発会社の博多支社や東京本社で連続爆破テロが発生する。さらにキングシーサーを信奉するテロリストたちが紺碧(こんぺき)島のホテルを占拠し、金田一たちはオーナー関係者とともに人質となる。事件の根は遺跡の調査保存と観光開発をめぐって過去に起きた殺人事件へとつながっていた。

 『殺戮(さつりく)のディープブルー』は劇場版の公開後にテレビ版も制作され、こちらは第126話から130話までの5話を費やして放映されている。海底遺跡やリゾート開発、テロリストによるホテル占拠、コンピューターでのチャットやハッキングといった物語の大枠は劇場版と同じだが、登場人物や相互の関係にはかなり違いがあり、キングシーサーに従うテロリストたちも、テレビ版ではネオ・ムー王国の復活を信じているという設定だ。

 また地震による津波の前触れで潮が大きく引き、巨大な海底遺跡が一瞬姿を現す印象的なシーンは、劇場版にしか出て来ない。

  (世良利和・岡山大学大学院非常勤講師)