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磯野家の沖縄旅行 海洋博中心に観光地紹介 <アニメは沖縄の夢を見るか>(30)


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挿絵・吉川由季恵

 テレビアニメ『サザエさん』が始まったのは1969年10月5日のことだ。沖縄でも同月20日からOTVで放送が開始され、本土復帰をはさんで半世紀以上も続いている。このシリーズはサザエさん一家の日常を描くホームアニメだが、時にはそろって旅行に出掛けることもある。一家の最初の家族旅行は70年の大阪万博だと思われるが、沖縄で海洋博が開催中だった75年12月には「めんそ~れ沖縄」というエピソードが放送された。

 全日空機で那覇空港に到着した一家は、琉装の女性たちに「めんそ~れ」と迎えられる。それからまず首里城の守礼門を訪れ、金城の石畳道を散策する。続いて中城城跡や北中城の中村家住宅をめぐった後、いったん那覇に戻って一泊したらしく、翌日はホーバークラフトで本部の海洋博会場へと向かう。

 海洋博会場では琉舞、無人運転のCVS、アクアポリス、沖縄館、イルカショーなどが次々に登場し、海洋博のシンボルだった伊江島が夕陽(ゆうひ)に染まる場面で一日が終わる。そしてこの日の宿は、海洋博に向けて今帰仁に開業したリゾートステーション列車ホテルだ。ご記憶の方も多いと思うが、SLに連結された本物の寝台車がホテルとして使われ、わざわざプラットホームまで作られていた。

 翌日はパイナップル畑、海中公園のグラス底ボートから眺めるサンゴ礁の海、万座毛の象の鼻、ハイビスカスティー、玉泉洞、モンキーバナナ、サトウキビなどが駆け足で紹介され、最後に一家は那覇港から琉球海運の客船で帰途につく。わずか7分の尺に沖縄本島の主なスポットが目いっぱい盛り込まれた観光ガイドアニメだが、もちろん沖縄戦や米軍基地のことなど出てくるはずもない。

 実はこの海洋博に合わせて『めんそ~れ~沖縄へ サザエさん一家おきなわの旅』という全50ページのパンフレットが発刊されていた。海洋博の取材に来ていたノリスケおじさんが、一家を沖縄に招待するという設定になっており、おそらくアニメの沖縄編はこれと連動する形で企画されたのではないか。

 このパンフレットには、アニメ版では紹介されなかった国際通りでのショッピングや公設市場、南部戦跡、沖縄料理、祭りや民芸品、さらには宮古、八重山、久米島の情報などが掲載されている。ただし「沖縄そばは手打ちうどんの一種ね」というサザエさんの発言については、監修した沖縄県の観光課が大目に見たのだろうか。なお、2014年の『サザエさん』シリーズには、石垣島出身の「ガンさん」こと「岩波平八郎」というマスオの同僚も登場していた。

(世良利和・岡山大学大学院非常勤講師)