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島んちゅMiRiKa 地元作品、参加者その後も活躍 <アニメは沖縄の夢を見るか>(34)


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挿絵・吉川由季恵

 前回取り上げた『はいたい七葉』の少し前に、沖縄を舞台とする県産アニメとして注目されたのが『島んちゅMiRiKa』(2011)だ。これは沖縄県がめざすキャラクター事業の核と位置づけられた作品で、企画には仲井真県知事らの名前がクレジットされ、制作発表も県庁で行われている。

 アニメ制作はうるま市に本社を置くソラティアに委託し、そのキャラクターを活用した県内企業による事業展開が期待されていた。おそらく『龍神マブヤー』に続く女の子向けのキャラクターが開発したかったのだろう。地元のテレビや新聞でも製作発表や声優のオーディションが報じられ、話題となった。

 監督には『陽だまりの樹』(2000)や『火の鳥』(2004)などで作画監督を務めた大下久馬、脚本に『ドラゴンボール』(1986―89)の平野靖士、美術監督に『新世紀エヴァンゲリオン』(1995―96)の加藤浩、そしてヒロインたちを導くMiRiKaの声には声優界の大御所・日高のり子が起用されるなど、本土のアニメ業界で実績のあるスタッフ、キャストが名を連ねた。

 2011年3月にはパイロット版とそのメイキング映像が琉球朝日放送(QAB)で放映されている。雨宿りで出会ったマイ、ルリ、ケイという小学生の女の子三人が主人公で、それぞれミュージカル、琉舞、空手をやっているという設定だった。千年の未来と現在をつなぐ時空に入りこんだ三人がMiRiKaの力を借りながら、邪悪な存在に操られた巨大なマジムンと戦い、ケイの道場仲間のマブイを取り戻す。

 声を担当したオーディション合格者たちの出来は良かったが、マブイやマジムン、シーサーに空手、三線、最後はみんなでカチャーシーといった沖縄色の演出はありきたりだし、沖縄各所の風景もべたっとした感じで印象は薄い。同年5月にはサウンドトラックCDの発売、7月にはQABおよびBSチャンネルでパイロット版の再放送と続き、秋からはシリーズ化されてQABが毎週放映するはずだった。ソラティアのスタッフによるSNSではアフレコ作業なども報告されていたが、結局テレビシリーズは実現しなかった。

 本格的な県産アニメとしては中途半端に終わった本作だが、まったくの無駄だったわけではない。声優やアニメーターとして地元から参加したうちの何人かは、その後もアニメ業界で仕事を続けているからだ。中でもルリの声を担当した下地紫野は首里高校に在学中だったが、卒業後に本格的な声優を志して上京し、『アイカツ!』(2014―16)の大空あかり役をはじめ話題作に相次いで出演を果たしている。

 (世良利和・岡山大学大学院非常勤講師)