昨年末から「県産アニメ」の話が続いているが、もうしばらくお付き合いいただきたい。今回まず取り上げるのは、『BLUE REMAINSブルーリメイン』(2001)という作品だ。監督・脚本の滝沢敏文/高林久弥やキャラクターデザインの美樹本晴彦をはじめ、制作は本土側の主導によるものだが、CG制作には沖縄のデジタルメディアファクトリーがクレジットされていた。本作は日本のフル3DCGアニメとしてはかなり初期に属している。
惑星探査を終えた環境物理学者のリュウ夫妻は、幼い娘のアマミクを伴って核戦争真っただ中の地球に帰還する。宇宙船は核汚染の影響が少ない沖縄の海底へと潜ったが、放射能にむしばまれた夫妻は、アマミクを冷凍睡眠装置に入れて地球の種子とともに未来を託し、その保護を宇宙船のスーパーコンピューターに命じた。
それから90年後、冷凍睡眠から目覚めたアマミクは、海中都市で生き残っていた人々と出会う。だが、その世界を制御する複数の生体コンピューターのうちの一体であるグリプトファンは、環境破壊を招いた人類を地球から抹殺しようとしていた。神のごとく振る舞うこのグリプトファンの声を担当したのは、沖縄出身の津嘉山正種だ。
海底にある聖域は与那国の「海底遺跡」がモデルに違いないし、ヒロインのアマミクという名前やシネリク海域という名称は、琉球の創世神話に由来している。さらには地球再生の鍵を握る種子の入ったカプセルも、久高島の五穀起源伝説を連想させる。
ただし現在の眼から見ると、地球規模の核汚染と生命の再生というストーリーは奥行きを欠き、人物描写も表情も単調だ。20年以上前の3DCGという技術的制約に加え、アマミクに吹石一恵を配したのもミスキャストではなかったか。
一方、沖縄テレビ(OTV)で放映された『ジェイコブの屋根』(2003)は、一話が3分ほどの3DCGのアニメシリーズだ。クレイアニメ作家の又吉浩が監督を務め、制作にはOTVのほか沖縄市に拠点を置くCGCGスタジオとシリコンスタジオがクレジットされていた。赤瓦の屋根を主な舞台として、ジェイコブという名前の赤いシーサーに一癖あるガジュマルの葉の精が絡むギャグアニメだ。
ときおり泣かせどころも織り込まれており、ジェイコブの造形を含む全体の印象は、又吉自身が本作の少し前に手がけた短編『Wonder Frog』(2000)に近い。ありきたりの過剰な沖縄色は施されておらず、それがかえって沖縄独自の自由なアニメの可能性を感じさせた。主題曲に使われた「脱力クラブBAND」の『甘い生活』も耳に残る。
(世良利和・岡山大学大学院非常勤講師)