『恋する小惑星』(2020)は、Quroによる同名のマンガをアニメ化したテレビシリーズだ。ウォン・カーウァイ監督の『恋する惑星』(1994)を連想させるが、タイトルの意味も内容的にも関連はない。主な登場人物を女子が占めるガールズアニメで、入浴回や水着回も盛り込まれている。
高校に入学したヒロインの木ノ幡みらは、部活で地学部の天文班に入る。そして幼いころに一度だけ出会った真中あおと運命的な再会を果たす。二人は、いつか小惑星を見つけてあおの名前をつけよう、と約束して別れたのだ。お互いにその約束をずっと心に抱いてきたのだが、男の子だと思っていたあおが実は女の子だった、というところから物語が始まる。
マンガやアニメ、ラノベの世界では、男女の性の入れ替わりや同性愛的なテーマはさほど珍しいものではない。古いところだと、手塚治虫のマンガ『どろろ』で少年と思われていたどろろが最後に少女だったと明かされる。劇場版アニメ『アリオン』(1986)のセネカもどろろによく似た設定となっていた。また永井豪のマンガ『デビルマン』では、両性具有の飛鳥了こと大魔神サタンが不動明を愛してしまう。
他にも挙げればきりがないので本題に戻るが、『恋する小惑星』では仲間や先生に囲まれて学園生活を送るみらとあおが、恋愛にも似た友情を深めてゆく。小惑星を見つけるという夢に向かって進む二人の姿を描きながら、天文や地質の初歩的な知識がちりばめられている。そして物語の終盤では、日本で一番多くの星が見える天文観測の聖地・八重山が舞台となる。
新天体発見のための高校生向けプログラム「きら星チャレンジ」が石垣島で開催され、選抜に合格したみらと引率の先生、そして選抜に漏れてもあきらめ切れないあおの三人がやってくるのだ。南ぬ島石垣空港に始まって、電波望遠鏡のVERA石垣島観測局や105センチ口径の反射望遠鏡「むりかぶし」のある石垣島天文台などを訪れ、みらとあおは仲間といっしょに専門家の指導を受けながら小惑星発見に挑む。
石垣島の場面では何度か三線の音色が響き、A&WならぬA&Mも登場するが、アニメでは総じて沖縄色が薄い。また沖縄本島から参加の友利飛鳥は『ケンコー全裸系水泳部 ウミショー』(2007)の蜷川あむろや、「THE IDOLM@STER」シリーズの我那覇響などと同じくワイルドな元気系で、沖縄出身の少女に割り当てられるキャラクターのパターンの一つを体現している。ちなみに飛鳥の声を担当しているのは沖縄出身の下地紫野だった。
(世良利和・岡山大学大学院非常勤講師)