有料

病害動物の動態、一冊に 医学博士・真喜屋さん 国内外の論文再編集


病害動物の動態、一冊に 医学博士・真喜屋さん 国内外の論文再編集 「数式で知る病害動物の発生動態」を手にする真喜屋清さん=6月24日、嘉手納町嘉手納
この記事を書いた人 Avatar photo 当銘 千絵

 沖縄病害生物研究室を主宰する医学博士の真喜屋清さん(85=嘉手納町)がこのほど、これまで国内外の学会専門誌などで発表した原著論文(1968年~92年)の中から、病害動物の個体群動態に関する33編を再編集した「数式で知る病害動物の発生動態」を自費制作した。難解な数式を分かりやすく説明し、数字だらけのデータを240ものグラフ表示に変え、論集としてまとめた。

 真喜屋さんは長年、鹿児島大や名古屋大、北九州産業医科大で主に、人体に病害を与える「医動物学」の研究に取り組んできた。

 日本脳炎やマラリア、デング熱などで最も多く人類を病死させた「蚊」の分布を国内外で調査。人体に病害を与えるネズミやヒル、チョウバエの発生状況なども調べた。同書に収められた論文では、墓地のヤブカと野外地域のアカイエカ集団で得た方法論を応用して、他の病害動物の発生動態や防除法の解析を行った。

 真喜屋さんは国内の寄生虫症のみならず、中国やラオス、ケニヤ、タンザニアなど海外の症例にも積極的に取り組み、各地域における防除対策の研究にも寄与した。「昔から好奇心が旺盛で、気になったらとことんやるタイプ。何より現地に行き、状況を調べることが好きだった。家族や友人からは愚直だと言われる」と話す。

 海外での研究旅行では毎回、感染症対策に気を付けていたが、研究者仲間がデング熱やマラリアに感染するトラブルにも見舞われた。中国江西省・四川省では妻の博子さんも一緒に現地の小学校へ赴き、日本住血吸虫症の予防対策として人形劇を使った健康教育を行った。真喜屋さんは「自分たちにできることをコツコツと続けてきたが、研究の成果や啓蒙活動が一人でも多くの人の役に立てればうれしい」と述べた。

 「数式で知る―」は非売品で、200冊印刷した。これまでに全国の県立図書館や県内の公立図書館に無償提供したほか、今後は免疫学や熱帯学などの研究関係者に寄贈する予定だという。同書に関する問い合わせは電話090(6864)9921(真喜屋さん)まで。

 (当銘千絵)