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<読書・BOOK>『琉球・沖縄の主体性確立を求めて 本村紀夫の軌跡』 時代を切り開く手がかりに


<読書・BOOK>『琉球・沖縄の主体性確立を求めて 本村紀夫の軌跡』 時代を切り開く手がかりに 『琉球・沖縄の主体性確立を求めて 本村紀夫の軌跡』同書編集委員会編 琉球館・2200円
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 軍事植民地支配が濃厚になる沖縄で、本書は「私たちの生存を規定している被植民地状況に抗う」紙礫(かみつぶて)となるか。

 1971年10月、沖縄返還に関する「沖縄国会」中、沖縄青年同盟行動隊3人による「国会爆竹事件」があった。その後、彼らはそれぞれの出身地、八重山、宮古、沖縄島の言葉で法廷陳述し、うちなーぐち(琉球諸語)による裁判を要求した。それは「沖縄と日本の関係再編への挑戦」でもあった。

 その一人、本村は、青壮年期を関東で企業人、市民活動家として生き、2011年に生活の拠点を沖縄に移した。12年、同志と共に株式会社Ryukyu企画を設立し、沖縄の「主体性確立運動」の兵たんの役割を担い今年3月、75歳で逝去した。本書は本村逝去からわずか2カ月後、「彼の思想と活動を理解し・検証し、発展的に継承するにはそれらをあらためて確認する必要がある」として、同書編集委員会によって発行された。

 遺品整理中に確認し、本書に収録された新資料がある。爆竹事件で押収され、後に返却されたロウマッチ、裁判一次資料、家族の手紙など。その他、沖縄戦後史の貴重な資料を収録している。琉球・沖縄近現代史資料館が設立され、これら資料が収蔵されることを願う。

 本書の構成は▽〈インタビュー〉本村紀夫に聞く「沖縄青年同盟と在日沖縄人の運動」▽エッセー(独立も辞さず他)▽在日沖縄青年運動の軌跡▽追悼文▽解説・本村紀夫が切り開いた地平―の章からなる。「在日沖縄青年運動の軌跡」の章は、昨年刊行された『沖縄青年同盟資料集』と併せて読んでほしい。

 解説の章は、後田多敦が執筆している。後田多は、本村の最晩年までの思想、多様な活動の深化を琉球・沖縄史の文脈の中で的確に読み取り「これによって沖縄の主体性確立運動とでも総称できる活動の新しい地平が切り開かれた」と評価する。

 本書は、本村紀夫を通して沖縄人としての主体性確立について考え、時代を切り開く道筋をを提供している。

 (浦崎成子・21世紀同人会「うるまネシア」編集委員)


 「琉球・沖縄の主体性確立を求めて―本村紀夫の軌跡―」編集委員会 宮古島出身で、今年3月に死去した沖縄青年同盟のメンバー、本村紀夫の思想と活動を検証し、発展的に継承するために結成された。