浦添市の国立劇場おきなわで25日に開かれた、国指定重要無形文化財「組踊音楽歌三線」人間国宝で、安冨祖流絃聲会師範の西江喜春の第4回独演会「歩(あゆ)でぃちゃる一道(ちゅみち)」(同実行委員会主催、琉球新報社共催)。組踊や舞踊曲で、情景を思わせる伸びやかな歌声をたっぷりと聞かせた。
舞踊「花風」では、西江も歌三線に加わった。玉城流扇寿妙の会会主の比嘉美好の憂いを帯びた舞に、西江が歌う「下出し述懐節」の伸びやかな高音が合わさり、愛しい人との別れの切なさを一層引き立てた。舞踊は「かせかけ」を玉城流翔節美智子乃会会主の前川美智子、「高平良万歳」を玉城流三代目家元の玉城盛義が踊った。
独唱は、西江門下の若手と中堅が担った。独唱の花形とも言われる「仲風節」は玉城和樹が歌った。歌い出しの高音から美しく、丁寧に歌い上げた。続く「述懐節」は花城英樹が味わい深い歌声で披露した。「干瀬節」は比嘉誠伍、「散山節」は金城亮太が歌った。
組踊「銘苅子」は、西江が歌三線を1人で担当した。銘苅子(東江裕吉)に羽衣を奪われ、妻となった天女(新垣悟)。おめなり(渡名喜苺英)とおめけり(富島花音)と母である天女との別れの場面では「東江節」が3回にわたって歌われる。
子との別れを決意した母の思いを歌う1回目は、芯の通った歌声が印象的だった。2回目は、子を残す母の無念さや離れがたさが低音部に表れた。最後の「東江節」は、伸びやかで奥行きのある高音の「アーキー」で、子が母を探して泣き叫ぶ様子を表現し、胸に迫った。
地謡は国指定重要無形文化財「琉球古典音楽」人間国宝の大湾清之が笛、同「組踊音楽太鼓」人間国宝の比嘉聰が太鼓を務め、人間国宝そろい踏みの舞台となった。ほか、三線を玉城和樹、箏を宮里秀明、胡弓を川平賀道が務めた。立方監修は同「組踊立方」人間国宝の宮城能鳳。
「若い雰囲気が出れば」と、門下生を中心に若手中堅も多く出演させた本公演。西江の次世代に向けた継承への思いも感じられた。
(田吹遥子)