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職人通し沖縄の情景映す 映画「SANSHIN~三線~」あすから桜坂劇場


職人通し沖縄の情景映す 映画「SANSHIN~三線~」あすから桜坂劇場 ドキュメンタリー映画「SANSHIN~三線~」の一場面。今年2月に急逝した照屋勝武さんが三線製作に携わる様子も記録されている(本間章子監督提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

 沖縄の三線職人を追ったドキュメンタリー映画「SANSHIN~三線~」が5日から、那覇市の桜坂劇場で上映される。三線に魅了された本間章子監督が、三線職人たちへの取材を通して、三線の音色が生活に息づく沖縄の情景を映す。本間監督は「三線は楽器ではなく存在、家族。魅力に改めて気付くきっかけになれば」と語った。

 本間監督は新潟県出身の構成作家。三線との出合いは2017年、埼玉県にある公民館の三線サークルだった。無心になれるきっかけを探して行き着いたその場所で、初めて三線を弾いた時の感覚は今も忘れられない。「左腕から体に伝わる振動に驚いた」。監督が“パートナー”として迎えた三線には、修理の跡を記した手書きの製作証明書があり「作り手の手を感じ、愛を感じた」と言う。「あなたはどうやって生まれたの」。その問いが本間監督を三線職人に導いた。

映画を手がけた本間章子監督=1日、那覇市泉崎の琉球新報社

 同年、本間監督は沖縄に渡り、三線の製作証明書を書いた、職人の照屋勝武さん、渡慶次道政さん、上原睦三さん、岸本尚登さん、それぞれの工房に密着した。岸本さんの弟子で三線職人を目指す、ブラジルに住む県系4世の志良堂サリタさゆりさんらも取材した。

 2年間で100時間以上を撮影。企画や編集も全て1人で担った。21年にカンヌ映画祭批評家週間長編部門に出品した。同年、沖縄へ移住。イベントなどでの上映を経て今回満を持しての一般上映になる。撮影開始から7年。映画に出演した照屋さんは今年2月に急逝した。本間監督は「とても残念。映画に息づく照屋さんのメッセージを感じてほしい」と語る。

 本間監督は撮影を振り返り、「職人たちは沖縄への誇りを想像以上に持っていた」と力を込める。「ナイチャーの自分が外から来て、沖縄の文化に踏み込んでいることが申し訳ない」と葛藤もあった。「何も知らないからこそ、初歩的なことから聞けたのかも」とも話す。「素晴らしい宝が身近にある沖縄の人がうらやましい。映画が、三線の魅力に改めて気付くきっかけになれば。家で眠っている三線があったらケースを開けてほしい」と笑顔を見せた。

 5日午後2時からの上映回では、最後に監督とキャストの舞台あいさつがある。

 (田吹遥子)