玉城流扇寿律乃会会主の安次嶺律子の独演会「思事やあまた~女舞四題」(同実行委員会主催、琉球新報社共催)が10月30日、那覇市泉崎の琉球新報ホールであった。芸歴60年で安次嶺が培った技芸と人との絆、踊りに対する情熱にあふれる舞台だった。
涼やかな風鈴の音が会場に響き、「作田」で幕開け。出羽の歩みでは堅さを感じる部分もあったが、団扇を手にたおやかに踊った。「諸屯」では、書家の茅原南龍氏が構成曲の琉歌を書きつづった作品を舞台上に映し出した。内に秘めた情熱を抑制的に表現する安次嶺の所作は、静寂の中でしっとりとした余韻を残した。
地謡は歌三線に西江喜春、太鼓に比嘉聰、笛に大湾清之と人間国宝がそろい踏み。2部は、そんな地謡をメインにし「宮城クヮディサー節」「中作田節」「伊集早作田節」で始まった。最後は西江と花城英樹、玉城和樹で特別に「ナークニー」を歌った。85歳の西江の年齢を感じさせない伸びやかな歌声に観客は聞き入った。胡弓は川平賀道、箏は安慶名久美子、宮城秀子。
後半は雑踊2題を届けた。「浜千鳥」はふるさとへの思いを味わい深く踊った。フィナーレの「加那ヨー」は、扇寿会の谷田嘉子、金城美枝子両家元のおはこだ。両家元に「舞台では自信を持ってあなたの踊りをしなさい」と送り出されたという安次嶺は「最後は心が吹っ切れた」。会場の手拍子や指笛に心を躍らせ、かれんに舞った。
踊りを始めたきっかけは、踊り好きの両親が喜んでくれたことだが「最終的に自分が踊りを好きになっていた」とほほ笑む。長年、琉球舞踊公演の企画や運営、アナウンスという立場からも琉球芸能を支え、それによるつながりは幾重にも広がる。満を持しての初の独演会は「プレッシャーがあって大変だった」と言うが、「まだまだ先生方の技芸には追いつけない。頑張りたい」と意欲を語った。
(田吹遥子)