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「旅行会社の枠超える」 沖縄ツーリストが創業65年 東良和会長に聞く今後の展望


「旅行会社の枠超える」 沖縄ツーリストが創業65年 東良和会長に聞く今後の展望 創業65周年を迎え、今後の沖縄観光などについて語るOTSの東良和会長=26日、那覇市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 1958年創業の県内大手旅行会社の沖縄ツーリスト(OTS)が10月で創業65周年を迎える。コロナ禍を経て、従来の旅行会社が提供していたサービスの枠には収まらない新たな事業も展開している。沖縄の観光業の課題や展望について東良和会長に聞いた。


―新たな取り組みは。

 「コロナの3年間は65周年を迎えられるか経営者として不安があったが、どうにか顧客の皆さまなどの支えで会社を維持できた。感謝したい」

 「新ビジネスモデルとして、沖縄に興味を持っている人たちの旅行を顕在化させる『デジタルDMOプラットフォーム』を1月から開始した。これまでの核だった添乗員付きの形に加え、観光協会などが地域主導型で利用者のニーズに合わせた旅行をつくることができた。スマートフォンから体育館コートや公民館など公共施設の予約ができる『SPMクラウドシステム』は、県内外の約110施設で導入が進んでいる。従来の旅行会社の枠を超えて、スポーツコンベンションのシステムを開発できた」

 「SDGs(持続可能な開発目標)に配慮した取り組みにも力を入れる。今後はレンタカーにも電気自動車(EV)を導入し、電力の半分は自然エネルギーで賄うつもりだ。旅先でビーチクリーンなどのボランティア活動を組み込むボランツーリズムも推進していきたい。地元の人と触れ合いたいという需要もあるので、広く参加を募りたい」

―観光業の人手不足への対応策は。

 「まずは賃金を上げなくてはならない。この3年間は賃金アップどころか、継続的に雇用するのに精いっぱいというような財務体質だった」

 「賃金を上げるには行政の直接支援が効果的だと考える。例えば、県や市を通して採用する場合は時給をアップするといった措置を講じることができれば人手不足の状況も緩和され、夏の繁忙期を乗り越えることができる」

 「外国人雇用を肯定的な形で受け入れる風潮が一般的にはまだない。単純作業をする社員が不足しているのが現状だが、正社員として採用した外国人は取引先との外国語でのやりとりなどが業務の中心なので、単純作業は任せにくい。幅広い業務を任せられる外国人を効率的に受け入れる仕組みが必要だが、法規制の問題がネックだ」

 「一方で、デジタルで人材を賄うことも可能で、そうすれば日本にいなくてもできる仕事はある。コロナ前はレンタカーを貸し出す時に、電子端末を用い、ソウルのコールセンターの社員が遠隔で説明していた時期もある。部屋や車の清掃はできないが、チェックインや受け付けなどは、ロボットを導入するまではいかなくとも、テレビモニターなどの映像を通した接客としてできるだろう」 

(聞き手・與那覇智早)