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[県経済この1年]観光回復、景気上向く


[県経済この1年]観光回復、景気上向く 行き交う観光客らでにぎわう那覇市の国際通り=7月24日
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 2023年の沖縄経済は、新型コロナウイルス感染症の5類移行などを受け、観光需要が大きく回復し、さまざまな産業で復調の動きが広がった1年となった。4年ぶりの通常開催となったイベントも多く、外出する機会が増えるなど消費は旺盛で、内需拡大によって全国に先行して経済活動は力強かった。一方で人手不足が深刻化した。賃上げや資源高も重なり、中小・零細企業には厳しい経営環境が続いた。一部業種には物価高が重く響いた。牛肉の需要低下で子牛価格の下落が止まらなかった。コロナ禍の停滞を脱し、景気が上向いた県経済の1年を振り返る。


<観光、行動制限なし>国内客、コロナ前水準に

 5月の新型コロナの5類移行によって前年度までのような行動制限がなくなった沖縄観光は復活の兆しを見せた。全国旅行支援の延長や、集客力の強い祭りやイベントが各地で通常開催され、人流が回復した。

 入域観光客数は国内客のみではコロナ前と同水準で推移し、観光客の観光消費額や人泊数も増加した。海外客は空路は17社が7路線で就航しているほか、外航クルーズの再開もあった。県が掲げる「量から質への転換」の実現に向け、入域客だけではなく、観光消費額や人泊数に着目し、高付加価値化を求める動きが強まった。

 一方、空港やホテル、観光バス、タクシーなど、観光業界全体での人手不足が顕在化し、修学旅行のバス運転手不足や、空港関係者の人員が足りず国際線の復便ができないなどの課題が浮き彫りになった。人手不足解消に向け、待遇の改善や外国人労働者の雇用、観光業界の魅力発信などがより求めらた1年だった。

 7月末~8月初旬に襲来した台風の影響で痛手を被った観光事業者も多かった。県内観光事業者が受けた被害額は16億円以上に上るとして、補償制度の創設や観光危機管理基金の設置を求める声も上がった。

 (與那覇智早)


<原材料高騰費の影響>電気、タクシーで値上げ

 ロシアのウクライナ侵攻や円安による資源価格、原材料費の高騰、人手不足などを背景に、2023年はさまざまな品目のモノやサービスの値上げに接する機会が多かった。

 沖縄電力は6月、標準家庭で33・3%増となる電気料金の値上げを実施した。値上げは43年ぶり。国や県による支援策が講じられているため、24年5月分までは値引きによる電気料金の抑制が続くが、資源価格や為替の動向次第で家計や企業活動の負担が増す可能性がある。

 物価高騰による経営立て直しや乗務員の待遇改善を図るため、8月14日から離島で、10月25日から沖縄本島でタクシー運賃が値上げされた。いずれも消費増税の影響を除くと7年ぶり。

 県内の毎月の消費者物価指数は22、23年(10月時点)と前年同月を上回る水準が続いている。仕入れ値の高騰分を販売価格に転嫁する傾向は進んでいるとみられる。

 (當山幸都)


<北部テーマパーク>ジャングリア、25年夏に

北部の新テーマパーク「JUNGLIA(ジャングリア)」の全体イメージ
(ジャパンエンターテイメント提供)

 今帰仁村と名護市にまたがる「オリオン嵐山ゴルフ倶楽部」跡地に整備中の新たなテーマパークについて、運営会社のジャパンエンターテイメント(名護市)と、同社の筆頭株主である刀(大阪市)が11月、テーマパークのブランド名を「ジャングリア」にすると発表した。2025年夏ごろの開業を目指している。

 開業時の面積は60ヘクタール、投資額は700億円規模を想定。コンセプトは「パワー・バカンス」。豊かな自然を空の上から一望できる気球体験や、森林の中を専用車両で恐竜から逃げ回るアトラクションなどを準備している。世界自然遺産に登録された県北部「山原(やんばる)」でしか味わえない各種体験を通じた興奮や大自然を満喫する贅沢(ぜいたく)感を得てもらうことなどを狙っている。

(謝花史哲)


<雇用>人手不足が深刻化

 新型コロナウイルスの影響緩和で経済活動が再開し、2023年は県内の幅広い業種で人手不足感が一段と強まった。主要産業の観光では空港の保安検査員らの人手不足が深刻化し、観光バスの運転手やバスガイドの確保も課題となった。

 人手不足は製造業、非製造業の各業種に及ぶ。12月に発表があった沖縄総合事務局財務部の法人企業景気予測調査(10~12月期)や、日銀那覇支店の県内企業短期経済観測調査(短観)では、雇用に関する指標で人手不足感が拡大。予定通りの新卒の人材確保が難しく、採用計画を下方修正する企業も出ている。

 沖縄労働局によると、11月は人手不足で人材が確保できない企業が業務を縮小する動きもあった。人手不足は生産効率化や賃上げ機運の高まりにつながる側面がある一方、需要を取り込めず機会損失が拡大すれば、経済への影響も懸念される。

 (當山幸都)


<最低賃金>上げ幅最大896円

 沖縄労働局は8月、2023年度の県内最低賃金(最賃)について、沖縄地方最低賃金審議会の答申通り、時給853円から896円に引き上げることを決定した。43円の増額で引き上げ幅は過去最大となった。10月に発効した。

(謝花史哲)


<子牛価格>需要減少 下落止まらず

価格下落が止まらない子牛の競り=10月17日、糸満市

 県内子牛価格の下落に歯止めがかからない状況が続いた。コロナ禍の不景気を受けて牛肉の消費が冷え込み、子牛の需要が減少したことが大きい。ロシアのウクライナ侵攻など国際情勢を背景にした飼料価格や燃料費高騰も農家を直撃し、厳しい経営状況が続いている。

 県畜産振興公社によると、県内家畜市場の黒毛和種の子牛取引平均価格は、2月の税込み59万4292円から下落を続け、11月には同44万5328円となり直近5年で最低価格となった。

 12月は同49万7029円(JA速報値)と年末需要で上昇したものの、こちらも直近5年で最安値となった。

 採算が確保できるとされる1頭当たり55万6千円を大きく下回り、農家からは「生活費を赤字の穴埋めに使っている」「離農・廃業を考えている」など悲痛な声が上がっている。

(玉寄光太)


<ゆいレール20年>3両編成、乗客3億人達成

3両編成車両に乗り込む乗客ら=8月10日、浦添市のてだこ浦西駅(喜瀬守昭撮影)

 戦後、県内初の軌道系公共交通機関として2003年に運行開始した「ゆいレール」が8月、20周年を迎えた。運営する沖縄都市モノレール開業から数年は乗客数が伸び悩んだが、徐々に乗客数を増やし、19年には過去最高の5万5766人を記録した。今年はコロナ禍で激減した利用者が回復する中で、従来より1両追加した3両編成の車両の運行が始まり、12月4日には延べ乗客数3億人を達成した。7年後の1日平均乗客数は7万2千人と予測している。

 (謝花史哲)


<コストコ沖縄出店>来年8月開業へ

南城市に出店する「コストコホールセールジャパン沖縄南城倉庫店」とほぼ外観が同じの岐阜県壬生倉庫店(提供)

 会員制の米系大手量販店「コストコ」が運営する「コストコホールセールジャパン沖縄南城倉庫店」が2024年8月、南城市玉城垣花に開業する。6月30日に着工した。

 地元からの採用を中心に300~400人の雇用を予定するほか、来客目標は1日3千~6千人を見込んでいる。コストコ開業に伴う雇用増加とにぎわいの創出から、地元では地域活性化への期待が高まっている。

 (玉寄光太)