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「中小に体力あるのか」経営者吐露 沖縄の実質賃金5.5%減 物価高に追い付かず


「中小に体力あるのか」経営者吐露 沖縄の実質賃金5.5%減 物価高に追い付かず
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 沖縄県内の実質賃金が比較できる2005年以降で、過去最大の下げ幅となる5.5%減となった。雇用確保や所得向上が思うように進んでいない状況が浮き彫りになった。県内の経済関係者からは「賃上げも重要だが、今の物価上昇に追い付くのは難しい」とため息も漏れた。

 全国的な物価上昇は県内でも広がっている。県が1月に発表した生鮮食品を除く県内消費者物価指数の23年平均(20年=100)は、前年比3.6%増の106.1となった。4.8%増えた1981年に次ぐ伸び幅だった。

 「今の価格上昇が異常だ。企業の賃金がすぐに追い付くのは難しい」。県商工会連合会の米須義明会長は語気を強める。米須会長は「正社員の賃金は上がっているはずで、数字と肌感覚のずれを感じる」とした上で「沖縄は小規模・零細の中小企業が大きい。賃上げをしている大企業に県内の中小企業がついていける体力があるのか」と話した。

 全国がほぼ全業種で現金給与総額が上昇したのに対し、県内は労働者の多い主要産業でパートタイム労働者の賃金が目減りし、全体の平均を押し下げた。宿泊を含む「飲食サービス業」でフルタイムの一般労働者は給与総額が上昇したが、パートタイムは5.2%減。「卸売業・小売業」や「医療・福祉」もパートタイムで減少している。

 県飲食業生活衛生同業組合の鈴木洋一理事長は「コロナ禍に退職が増えた影響で、短時間勤務のアルバイトや非正規従業員が増加し、全体の平均を下げているのだろう」と指摘。「正社員の給与は全体的に上がっている。正規雇用が戻るよう課題で取り組んでいかないといけない」と述べた。

 (謝花史哲、普天間伊織、與那覇知早)


<用語>実質賃金

 労働者が実際に受け取った給与である名目賃金から、消費者物価指数に基づく物価変動の影響を加味して算出した指数のこと。実質賃金が上昇することが本来の賃金が増えたことを意味する。